Vol.4 細かく裁断された200点を超えるパーツを繋ぎ合わせていく縫製作業
by RIDERSCLUB

  1. 日本のものづくり

たゆまぬ進化 × 変わらぬ伝統

細かく裁断された200点を超えるパーツを繋ぎ合わせていく縫製作業 “縫いながら立体を出す” 技術は、他を思いやるクシタニの信条から生まれた

クシタニのレザースーツは、裏地まで入れると縫製前のパーツ数は200点を超える。そのすべてを縫い合わせ、一着のスーツを完成させるのに、ベテランの縫製士でも24時間以上を要するという。
1日8時間作業しても3日はかかる。社内でも他部署から見れば“そんなにかかるんだ”と感じるらしいが、一般人が膨大なパーツを目にすると“そんなに短時間で作れるのか?”と驚くに違いない。

「作っていく順番は“色”ですね。ほら、革の色に糸の色を合わせるでしょ。ミシンで糸を交換するのは、けっこう時間がかかるんですよ」。レザースーツ作りで何が大変か聞いたら、縫製を担当する村松さんから返ってきた最初のコメントは、プロならではのクールな答えだった。
「縫製だけではないかもしれませんが“裂けない、破れない”と“着心地、動きやすさ”は、常に対峙しています。そこは大前提で、そのためにさまざまな縫い方がありますし、部位によっても縫い方を変えます。とはいえ、完成に近づくほど縫い方の選択肢が少なくなります(注:とくに腕や足は“筒状”になるため、最後は縫い方に制限ができる)。その辺りの縫う順番は暗黙の了解というか……。パーツを見れば、それがどの部位かはすぐに分かりますし」

 前号の裁断の回でも触れたが、クシタニの工場の主任クラスの職人は、担当する行程以外でも、すべてを兼務できるスキルがある。だから村松さんも一片の革パーツを見るだけで、縫製する行程の順番も瞬時に段取り、かつ作業効率を考えて“革の色で判断”と答えたわけだ。
 そして縫製のルールはかなりシンプルで、極端に言えば「各パーツの端から12mmの場所を縫うコト」だけ。しかしパーツに“ここを縫う”というラインが描かれているわけではなく、要所に“ここを必ず合わせる”という点(ポイント)が打たれているだけ。しかもパーツ同士で縫い合わせる辺の長さが異なったり、裁断された曲線が反対向きだったりもする。それを繋ぎ合わせるから“立体”になるのだが……。

「縫うのは誰でも出来ますよ(笑)。ただ、それをキレイに仕上げるのが大変なんです。決まりごとは“ポイントをズラさない”ことだけで、他は自由。でも自由だからこそ難しい。例えば“丸み”を出すために縫い合わせる辺の長さが異なるパーツがありますが、その場合はわずかに切れ込みを入れたりします。その入れ方は縫製担当者の経験で決めていますし、ミシンで縫うときのコツもあります。他にも、ダーツを入れて重ねることで丸みを出す部分もありますが、表側は強度が重要ですが、裏側は硬くならないよう、厚くならないように縫うことが肝心。ようするに『縫いながら立体を出す』わけです」
実際にミシンを操る村松さんの手元は、動画で見せられないのが残念なほど猛烈に繊細で、まさに職人技。
「難しいトコロはありますが、クシタニのレザースーツはパターンを作る人が縫い手のことを考えていますから、良い流れで作れるのだと思います。中には“縫い手が無理をしているな~”と感じる海外製品もありますけれど、僕らは決して無理をしていない。それに縫い方は、それが有効ならば外注さんの意見もキチンと取り入れていますしね。
そんな他の担当のことはもちろん“後のこと”を考えているのがクシタニらしさではないでしょうか。近年は裏地をセパレートにしたり、背中のエアロパッドの中身を外せるようにすることでリペアのしやすさも向上しています。そうやって作るモノの目的は決まっているけれど、やり方は自由。だから僕ら縫製担当は、キレイに早く縫うためにどうするか? を考えれば良いのです」

ライダースクラブ編集部

バイクを趣味として楽しむ大人のための二輪総合誌。ライテクやバイクのインプレ、装備などの深堀でバイクの楽しみをアシストします。

記事一覧

関連記事