Vol.6 みんな闘っている。同じように対応したい
by RIDERSCLUB

  1. 日本のものづくり

たゆまぬ進化 × 変わらぬ伝統

キャリアの長いライダーの中には、かつてのWGP500などトップカテゴリーのレースで、錚々たるプロライダーたちが着用するクシタニのレーシングスーツに憧れた方も多いだろう。そのクシタニは今、次世代を担う若手ライダーのサポートに力を入れている。
「若いライダーは比較的転倒が多いですね。レベルが拮抗していますし、さまざまなチャレンジをしていますからね。ただギリギリまで攻めた結果なので仕方ないですね」そう語るのはモト2、3など主に海外でのレーシングサービスを担当する皆川さんだ。

「レーシングスーツに対する要望が作る前に分かれば良いのですが、若いから実際に着て走ってからじゃないと、上手く意見や要望が出てこないこともあります。それに成長過程だと、当然筋肉が増えてキツくなったりしますし……」
そんなライダーが明確に伝えられない要望すらも考え、予測して用意するのがクシタニのレーシングサービスの役目だという。
「17年からCEVレプソルインターナショナル選手権(スペインのロードレース選手権。モトGPへの登竜門として有名)にアジアタレントカップからステップアップしたライダーのサポートで赴くようになりました。CEVのサポートは1戦飛ばしで行い、また現地にはミシンが無いので激しく破損したスーツは日本へ持ち帰り修理して、また現地へ……の繰り返しで、けっこう大変でした。今年からはGPライダーのサポートも始まり、ミシンを用意して可能な限り現地で補修しています」レーシングライダーを間近で見ている皆川さんいわく、最近はレーシングスーツの壊れ方にも変化があるという。

「若手のライダーは比較的転倒が多いのですが、昔に比べて“転び方”も変わってきたように思います。マシンやタイヤの進化、またライディングスタイルも変わってきたからでしょうか。特にGPではエアバックを装備したことで、転倒時のレーシングスーツの壊れ方も変わりました。それを補修するのは当然なのですが、現場で実際にダメージを見て、縫製や補強の入れ方の改善の提案を行うのも、僕の仕事です」
もちろん皆川さんも、主任クラスのクシタニ職人の例に漏れず、レーシングスーツの縫製や構造を熟知している。そして企画担当として、スーツやグローブ、ブーツなどレース系の新製品の開発では、量産の手前まで深く関わることも多い。
「たとえば最新の仕様では、ヒジの裏の当て革の面積を拡大しています。転倒時の擦れ方が以前と変わったので、よりプロテクションを高めるのと、スーツの破損を軽減するためです。他にもモト3では、ライダーではなくエンジニアの方から『最高速を上げるために、伏せた時にもっと〝薄く〞して欲しい』なんて要望もありますね。これも最近はエアバッグやブレストパッドを装着するため、上半身の厚みが増したからですね」
 そして前述したように、ライダーから要望や不満が出る前に、クシタニ側からの用意と提案もある。

「たとえば転倒時に手を打ったとします。すると後から腫れる可能性がありますよね。ところがライダー自身は“大丈夫だろう”って、とくに何も言わないんです。若いから、まだ全体が見れていない部分もあるわけです。そこで“たぶん腫れるから”というのをこちらが見越して、大きいサイズのグローブを使用することを提案したりします。そういうコミュニケーションも大切です」
 そうやって世界を飛び回り、ライダーをサポートする皆川さんが大切に考える〝クシタニらしさ〞とは?
「レーシングサービスという仕事ですから、もちろんライダーの要望や不満に対して、可能な限り対応したいと思っています。それは上位を走るライダーだけでなく、下位の方でも同じように接したいですね。だって、みんな闘っているんですから。いきなり成績を出せる人もいるだろうけれど、今は下位でもこれから伸びる可能性がある。その積み重ねがスキルとなって、トップライダーに成長していくんだと思います。
 この記事を読んでいただいている読者の皆様も、是非CEV、モトGPなどのレースをご覧になって、日本やアジアの若手ライダーがアジアからスペインCEV、CEVからGPのモト3、いずれは頂点のモトGPクラスを目指して成長していく姿を、クシタニと一緒に応援していただきたいと思います」

ライダースクラブ編集部

1978年から続く、バイクを趣味として楽しむ大人のための二輪総合誌。創刊から一貫してスポーツバイクの楽しみ方を探求、時代に合わせて多彩なバイクライフを提案し続けているオピニオン・マガジンです。

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