見たかバニャイア、マルティン、ベッツェッキ! ~日本グランプリMoto2クラス チームアジア1-2フィニッシュ!

ゴール後、たくさんの小椋ファンが陣取った90度コーナーで このカットの少し前には、バーンナウトで盛大に白煙をあげてくれた

3日間合計で7万6125人をモビリティランドもてぎに飲み込んだ、MotoGP第14戦・日本グランプリ。レースウィークの木曜日、奇妙なプレスカンファレンスがあった。
グランプリごとに恒例となっている、注目ライダーを招いての記者会見。2回に分けて行われたその1回目に登場したのは、第13戦インドGPを終えてMotoGPクラスのランキングTOP3にいる、フランチェスコ・バニャイア、ホルヘ・マルティン、そしてマルコ・ベッツェッキ。
ここまでの調子はどうか、インドGPのあの場面はなんだったのか、日本グランプリを迎えてどう戦うか――。そんなインタビューのあとに、どうも今シーズン「お決まり」だという、こんな質問があった。
「あなたはこの日本GPで、各クラス、誰が表彰台に乗ると思いますか?」
テレビのクイズ番組ならば「ではフリップにお書きください!」なんて軽いノリの質問だったんだろうけれど、僕ら日本のジャーナリストは、どうにも我慢がならない結果だった。

ホームストレートスタンドにはごらんの横断幕が ファンのみなさん、小椋はちゃーんと横断幕、意識してました!

3人のライダーがフリップに記したのは
フランチェスコ・バニャイア
Moto3:優勝アロンソ、2位マシア、3位ベルテッレ
Moto2:アコスタ、2位ロペス、3位アルボリーノ
MotoGP:優勝オレ、2位ミラー、3位ベッツェッキorマルティン

ホルヘ・マルティン
Moto3:優勝アロンソ、2位マシア、3位オルガド
Moto2:アコスタ、2位ロペス、3位アルデゲル
MotoGP:優勝オレ、2位ベッツェッキ、3位バニャイア

マルコ・ベッツェッキ
Moto3:優勝アロンソ、2位マシア、3位ルエダ
Moto2:ロペス、2位アコスタ、3位アルボリーノ
MotoGP:優勝ミラー、2位オレ、3位ビンダー

決戦を前に各クラスの表彰台メンバ―を予想する、左からバニャイア、マルティン、ベッツェッキ そこに日本人ライダーの名前は……なかった

もちろん、シリアスな答えではなかったのだろう。誰かひとりのライダーは、優勝に推した理由に「だってオレ、彼とは仲良しだもの」と、メディアたちの笑いを誘っていたし。
けれど、僕はいささかムッとしたのだ。ここは日本だぞ、少しは気を使わんかい、というわけではないが、Moto3の佐々木歩夢はどうした、Moto2の小椋藍は、チャントラはどうした!
仲のいいジャーナリストのひとりは「日本人の名前なかったね。なめてんのか、あいつら(笑)。ファビオがいたら歩夢の名前を出したはずだよね」なんて言ってた。クアルタラロは佐々木歩夢と仲がいいのだ。
軽いノリとはいえ、悔しいなぁ。歩夢よ、藍よ、チャントラよ。この悔しさ、晴らしておくれ――。

そして、そんな僕の思いは、日曜にきちんと達成された。
オープニングレースのMoto3クラスでは、インタビューに答えた3人全員が推していたダビデ・アロンソを7位において、みんなが2位に推したマシアには敗れてしまったけれど、佐々木が2位表彰台に立ってくれた。
そしてMoto2だ。
初日のプラクティス1/2では、チャントラがトップタイム。小椋も午前6番手/午後5番手とまずまずのスタートで、2日目のプラクティス3で、チャントラ→小椋が1→2を決め、公式予選でもチャントラ→小椋がフロントロー1→2番グリッドを占めてみせた。どんなもんだい!

レースウィークに入った時には風邪気味で熱もあったという小椋 予選日、決勝日にかけて体調がよくなったそうだ
今シーズン初ポールポジションからの今シーズン初優勝! 日本GPのチャントラは速かった! インドネシアでの小椋の反撃に気をつけろよぉ

Moto2の決勝レースでは、ポールポジションのチャントラがスタートから飛び出し、ディクソン、ロペス、ロウズ、サラックと一時2番手争いを演じた小椋が、3周目にはこの集団の先頭に立ち、チャントラを追う、チャントラ→小椋の1-2フォーメーション。そこには、バニャイアとマルティンが推したアコスタの姿はなく、ベッツェッキが推したロペスの姿もなかった。
アコスタは2列目4番手スタートから、オープニングラップでポジションを7-8番手あたりまで落とし、そこから追い上げのレースを強いられ、最後には3位表彰台に滑り込んだ。ロペスは序盤こそトップグループにつけていたものの、前戦インドGPで受けたロングラップペナルティを消化して、レース中盤からずるずると順位を落とし、13位でフィニッシュしている。

チャントラと小椋の強さは、それほど日本GPで光っていた。
チャントラはオープニングラップで2番手につけたディクソンより0秒461も速く走り、3周目には早くもこのレースのファステストラップをマークしていた。
小椋は3周目に2番手に上がってから、3番手のロペスより0秒5速く、5周目にはチャントラに続くレースファステストラップをたたき出した。決勝レースで3位に入ったアコスタのベストラップは19周のレースの15周目。フィニッシュラインを通過した時、チャントラに3秒0、小椋に1秒7ほど引き離されたのは、序盤に先行されて、もう追いつけなかったことを意味している。

レース中盤、トップを行くチャントラと、追う小椋との差はこんなかんじ このギャップがなかなか縮まらないまま終わってしまった

「チャントラはこのウィークで一番速く、追いつけなかった。けれど、日本グランプリで2位になれて、とてもうれしいです。予選2番手で、もちろんファンのみなさんが優勝を期待されていたのはよくわかっていましたが、2位でも充分にうれしいんです」と小椋。
インドGP終わりから体調が悪く、もてぎ入りした木曜には「ちょっと熱あるんすよ」と元気がなかった小椋。それでも会場のあちこちに見られた「79」の応援フラッグは、たくさん目に入った。
レース後、珍しく90度コーナーでバーンナウトしてみせたのは、このレースウィーク、体調を戻すのが最優先で、あまりファンのみなさんと触れあえなかったら、という意味だったのだという。

キャッキャとシャンパンをかけあった小椋とチャントラ 3位のアコスタは表彰台でぶぜんとした表情だった

チャントラは今シーズン初優勝を、プラクティス1から決勝レースまで、すべてトップで終えるという完全優勝。小椋は昨年の日本グランプリ優勝からの、2年連続表彰台。躍進したチームアジアのふたりは、残り6戦も全力で走る。
「チームにとって母国開催になった日本グランプリで、1-2フィニッシュというこれ以上ない結果を残してくれた。今シーズンも残り6戦。引き続きプッシュします」とチームアジアの青山博一監督は言う。

日本グランプリの前には、2024年に新チーム「MTヘルメットMSI」に移籍して、引き続きMoto2クラスに継続参戦することが発表された小椋。日本のファンは、引き続き日本人の世界チャンピオン誕生を待ち望んでいる!

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