チームアジア 25年は勝負のシーズン!

2024年の世界グランプリは、中量級「Moto2」クラスと、軽量級「Moto3」クラスで、大きなレギュレーション変更があったシーズンだった。それが、ワンメイクタイヤの変更。どちらのクラスも、ダンロップタイヤからピレリタイヤに変更されるという大変更があったのだ。

「24年は私たちホンダチームアジアにとって、すごく厳しい、予想を大きく下回ったシーズンになりました」

そう言うのは、ホンダチームアジアを率いるチーム監督、青山博一だ。説明するまでもなく、青山は2009年の世界グランプリGP250クラスのチャンピオンであり、レジェンドと呼ばれるにはまだ早いが、日本の期待を一身に背負って走っていたライダーだ。

「2018年に監督に就任して、24年で7年目ですが、これまでは少しずつステップアップしてきた実感があったんです。けれど、24年はこの辺まで行けるかな、という予想をはるかに下回ってしまった」

青山監督の就任2年目の19年にはMoto3クラスに小椋藍が加入、すぐにランキングTOP10に入ると、20年には小椋がチャンピオン争いをしてランキング3位を獲得、21年からはMoto2クラスにステップアップすると、翌22年にはここでもチャンピオン争いを繰り広げた。

ホンダチームアジアに6年在籍 2025年はついにLCRホンダIDEMITSUからMotoGPクラスに参戦するサムキアット・チャントラ

「(小椋)藍がリードする形で、Moto2クラスのチャントラも伸びてきたし、Moto3クラスは22年に加入した古里太陽がトップ10争いから、23年には表彰台に上がるまでになってくれた。なのに24年は、その伸びが停滞してしまったシーズンになってしまいました」

その原因は、やはりタイヤの変更というレギュレーションの変化に対応できなかったこと。タイヤの変更は、マシン特性に大きな変化を与え、まるで違うマシンになってしまう。もちろん、全チームともイコールコンディションなのだけれど、タイヤ変更への順応が早いチームとそうでないチームに分かれてしまった。

「Moto2クラスもMoto3クラスも、シーズンオフテストから苦戦していました。チームもライダーも、新しいタイヤへの順応に必死でした。ここはもう、ライダーの個人差もありますし、うまくタイヤ変更に順応できたチームがあったということは、私たちが順応できなかったということです」

それでも、Moto3クラスでは、開幕戦から古里が3位表彰台を獲得。幸先のいいシーズンインに見えたけれど、あれはテストと開幕の「マジック」にハマったのだ、という。

タイ・タレントカップからアジア・タレントカップ、アジア選手権から24年にMoto3クラスにデビューしたタチャコン・ブーシュリ

「シーズンオフのテストはスペイン・ヘレスなんですけど、ヘレスでうまくまとまらなくても、開幕戦のカタールは上手くいくことが多いんです。もちろん、太陽の頑張りもあるんですが、他のチームが開幕でモタついたのもあると思います。その意味では、今シーズンからMoto3クラスに参戦を開始したタチャコン(ブーシュリ)は、何もかも初めてで、ゼロから勉強している段階。ポイントを獲得したのが1レースだけではありましたが、とにかく24年シーズンは勉強の年でしたね」

Moto2クラスでは、小椋が他チームへ移籍し、エースライダーとして戦ったサムキアット・チャントラが、これも予想外の不振に沈んでしまった。23年シーズンはランキング6位を獲得したライダーだけに、今シーズンは優勝争い、チャンピオン争いができるかもしれない、と期待したシーズンだったが……。

「その意味では、チャントラがいちばん新しいタイヤへの順応に時間がかかってしまった。シーズン終盤にケガしたこともあって、表彰台に上がることもできませんでしたね。新加入のマリオに関しては、これも経験値を上げるシーズンで、ポイント獲得も4レースあった。まだ20歳、これからが楽しみなライダーです」

24年にMoto2デビューを飾ったマリオ・アジ 2004年生まれ、14歳からアジア・タレントカップを走った、25年シーズンはまだ21歳

そして、チームアジアから卒業した小椋がワールドチャンピオンとなったことについて。

「(小椋)藍は24年シーズンこそ他チームのライダーでしたが、私としてはずっとチームアジアの一員だって思っています。特に藍は小学生のころから知っているライダーだし、私が若い頃は、藍のお父さんと同じチームで走っていましたからね。小さい頃から家族みんなで頑張ってきた姿も知っているし、藍とは20歳差ですが、違う目線というか、監督とライダーという関係ではなかった24年シーズンは、親戚のおじさんのような気持ちでした(笑)。その彼が世界チャンピオンですから感慨深いというか、家族みんなのサポートを受けて、ずっと努力してきて掴んだ世界チャンピオン、本当におめでとう!って気持ちです」

その小椋とチャントラが、いよいよ25年からMotoGPクラスに昇格する。青山監督が育てたライダーが、ついに最高峰クラスにチャレンジするのだ。

「アジアタレントカップ、スペイン選手権、そこからチームアジアでグランプリに挑戦を始めた2人が、ついに最高峰クラスに参戦するというのはスゴいことですね。アジアタレントカップ出身の藍が世界チャンピオンになり、チャントラはタイ人初のMotoGPライダーとなることは、タレントカップを走るライダー、日本やタイの若いライダーにとって、すごくいい刺激になると思うんです。『がんばれば僕もできる』って気持ちをもって、若いライダーにもどんどん世界の舞台に飛び出してほしい」

そして2025年には、全日本ロードレースST1000クラスと、アジアロードレースASB1000の2冠を獲得した國井勇輝がチームアジアに再加入。2020-21年にMoto3クラスを走ったのに続いて、今度はMoto2クラスに参戦する。

全日本ロード、アジア選手権の2冠を獲ってグランプリにカムバックするチャンスをつかんだ國井勇輝 青山監督も「どれだけ成長してきたか楽しみ」と語る

「(國井)勇輝はMoto3を走っていた2シーズン、17~18歳でちょうど体が成長期にあって、身長も体重も増えてしまって、小排気量クラスではすごくハンディがあった。そこから日本へ戻って、ST600クラス、ST1000クラスと戦って、24年に全日本とアジアの2冠を獲って帰って来る。すごく興味深いカムバックですよね、日本でどれくらい成長してくれたかと、楽しみにしています」

2025年は、Moto3クラスにフル参戦2年目のタチャコン・ブーシュリと、4年目を迎える古里太陽、Moto2クラスにフル参戦2年目のマリオ・アジ、カムバックの國井勇輝を擁してグランプリに参戦するチームアジア。

「タチャコンとマリオが2年目で今まで以上に上位入賞を狙えるし、太陽はチャンピオン争いをしなければならないシーズン。それに日本とアジアのWチャンピオンの勇輝は『Moto2マシンは初めて』なんて言ってられないキャリアです。今まで以上に結果が求められる、勝負のシーズンになると思います。日本のファンのみなさんの応援に応えられるよう、頑張ります!」

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