「クシタニの魅力はなんですか?」と聞かれると、僕は「素材です。触ってみてください」と答えることが多い。
そして、その人の好みを探りながらスペックや機能を羅列してみる。バイクのスペックが好きな方は、ウェアのスペックも好きだからだ。
僕はメーカーの試乗会で海外にもよく行くが、クシタニに関心をもつ外国人はとても多い。テキスタイルだと素材やパターン、ベンチレーションの場所などを確認し、実際にジャケットを手に持つと「軽い!」と感動する。
そして、レーシングスーツを触ってもらうと、「なんて柔らかいんだ 」と皆が驚く。僕はその反応を楽しむ。『バイク専用の革』のインパクトはとても大きい。


恥ずかしながら僕は、クシタニの歴史をクシタニのライディングウェアを着用するようになってから知った。そして、知れば知るほどクシタニが好きになっていった。「ここまでやるのか」と驚くと同時に、「おもしろいメーカーだなぁ」と思うのだ。
クシタニの創業は1947年。すでに77年間も「バイクウェア=革製品」をつくり続けている。
バイクの誕生は1901年と言われている。その歴史は124年。ちなみに本田技研工業の創業は1948 年。バイクの生産を始めたのは1950年代前半で、これはスズキも同様。クシタニはまさに日本のバイク史とともに浜松でスタートし、それ以来、レザー製バイクウェアをつくり続けている。


日本で初めてレーシングスーツを作ったのもクシタニだ。 そこからレザーをバイクウェアに用いて、進化させ続けている。レザーはこの時からバイクライフになくてはならない存在なのだ。
僕も免許を取得してすぐにアメリカ製の革ジャンを購入した思い出がある。何年も着込んで馴染ませるタイプの硬い革ジャンだった。当然、エイジングを楽しむこのスタイルにも美学がある。
でも、初めてクシタニの革ジャンを着た時に驚いた。というか、その革を触った時に違和感のようなしなやかさに驚かされた。革にも色々あることを初めて知った。この驚きを多くの方に知っていただきたい。