コーヒーの木は日本でも育つ|クシタニカフェの豆を焙煎している職人談~1話~

クシタニではライダーが安心してホッと一息つける空間の提供として「クシタニカフェ」を展開させていただいているが、そこで提供されているコーヒーは、静岡県浜松市のスペシャルティコーヒー豆専門店「コーヒー屋ポンポン」のこだわりの豆が供されている。”ポンポン”は遠州地方ではバイクを意味します。バイク乗りでもあるマスターの羽田圭伸さんのコーヒーにまつわるコラム、「コーヒーの本当の話」です。

はじめまして。浜松のコーヒー豆屋“コーヒー屋ポンポン”の羽田です。
ほとんどの方が当店を知らないと思いますが、クシタニカフェさんやクシタニコーヒーブレイクミーティングでコーヒーを飲んだ事のある方は、胃袋はご存知のはず(笑)クシタニさんでお世話になっているコーヒー豆のサプライヤーです。
この度、クシタニさんでコーヒーについてお話しする機会を頂いたので、少しだけお付き合い頂けたら幸いです。

初回という事で・・・まずは、基本的な事からですが。
コーヒー豆が出来るまでをお話しします。(本当は生産地に行くのが一番ですが)
これが、コーヒーの木です。

コーヒーの木
浜松のコーヒー屋ポンポンのお店にあります。
コーヒーの木は、亜熱帯の植物なので平均気温20度ぐらい必要と言われてますが、浜松の屋内ならなんとか育ちます。
葉っぱも大きく観葉植物としても最適です。
コーヒー豆は、この木の種になります。
という事は、この木に花が咲き実がなります。

という事で・・・
こちらがその花です。

コーヒーの花
こちらは、自宅のコーヒーの木に咲いた花です。
白い小さな花でジャスミンの花に似ています。
ほんのりと甘い香りがします。
花の寿命が短く1〜2日ですぐに枯れはじめてしまいます。
コーヒーは自家受粉する為、何もしなくてもほぼ結実します。
コーヒーの産地ではミツバチを使って受粉させるところもあります。
時々コーヒーの花のハチミツを見つける事がありますが、そのハチミツからコーヒーの香りがする事はありません。
産地では2ヶ月もするとこの様に赤く熟しますが、日本では6ヶ月以上かかることも・・・(本当に遅いのです)
なかなか熟してきませんが、熟すと艶のある真紅色がとてもきれいです。
12月ごろ熟すとコーヒーの木がまるでクリスマスツリーのようです。
この様に日本でもコーヒー豆が出来るので、ご自宅でコーヒーの木を育ててコーヒーを収穫してみてはいかがですか。
コーヒーの実
豆むく
この赤い実の種がコーヒーの豆なので、これから収穫して処理をしていきます。
まずは、赤い皮(外皮)を取り除きます。
一つの実から通常二つの豆が出てきます。

白い豆です。
この時は、まだ内皮という少し硬い殻が付いています。

この白い豆を乾燥させて(パーチメントと呼びます)さらに脱穀(もう一度内皮を取り除きます)すると生豆と呼ばれるやや緑がかった豆が出てきます。
日本に生産国から輸入される時はこの緑っぽい豆の状態になっています。
実は、この時点でコーヒーの品質は確定されています。(美味しさが決まっていると言っても過言ではないかな)

焙煎の前の時点でコーヒーの品質は確定している -生産国で決まる生豆の品質-

この時点では、コーヒーの香りも味わいもないのでもう一手間かけます。
この生豆を煎る(専門用語で焙煎と呼びます)事です。

そうするととみなさんが一番よく見かける焦げ茶色したコーヒー豆になります。
焙煎をすることにより初めて、コーヒーの良い香りと味わいが出てきます。
ここで、焙煎人が勘違いするのは焙煎により香りや味わいが出てくるので、まるで自分がコーヒーの味わいを作り出していると勘違いしている事です。
コーヒーの素晴らしい香りや味わいは上記した様にコーヒーの生豆の品質で決まってくるので、煎る生豆の品質が悪いといくら焙煎の技術を駆使しても、悪いところから、良いものが出てくる事は無いのです。
ちょっと乱暴な言い方かもしれませんが、コーヒーの良し悪しは、日本にくる前に生産国で決まってしまうのです。この事については、追々お話ししていきます。
なので、やれ焙煎がどうだとか・・・挿れ方がどうだとか・・・
正直そんなに大きな問題では無いのです。

ただ、焙煎の度合い(深煎りとか浅煎りと呼びます)によりコーヒーの味わいの酸味と苦味が決定されます。
浅煎りだと酸味のコーヒーになります。
深煎りにすると苦味のコーヒーになります。
例えば、同じブラジルの豆を浅く焼くと酸味のブラジルができます。
逆に深く焼くと苦味のブラジルができます。
焙煎の技術も特には必要ありません。回数焼けば大体わかります。
実は、焙煎はご自宅でもできるのです。
生豆を手に入れて、油のひいてないフライパンでゴマや銀杏を煎る様にやればできます。ちょっとめんどくさいですが(笑)

浅煎り乾燥させて脱穀した生豆
深煎り焙煎されこげ茶色となったコーヒー豆

ざっくりとコーヒー豆の出来る流れを紹介しましたが・・・
実は、コーヒーの産地で行われているコーヒーの木に実がなり、収穫、処理されて生豆の状態になるまでの過程が最も大切なのです!
この過程によりコーヒーの美味しさが決まってしまうのです!
この過程が日本ではほとんど見る事や携わる事が出来ない為にどうしてもコーヒー豆の輸入後の焙煎や抽出で何とかしようとするのですが、正直・・・手遅れですね(笑)

初回から少し辛辣ことも書いてしまいましたが、これからもう少し「コーヒーの本当の話」をしていきますね。
コーヒー屋ポンポン

羽田圭伸(はねだ けいしん)
静岡県浜松市のスペシャルティコーヒー豆専門店「コーヒー屋ポンポン」のマスター。自身もバイク乗りで店名のポンポンは遠州地方の言葉でバイクの意。ジャパン・バリスタ選手権審査員、カップ・オブ・エクセレンス国際審査員。店内にはオリジナルブレンドで人気の「カフェ・ポンポン」をはじめ、「カフェ・ガードナー」「カフェ・クロスビー」「カフェ・ロッシ」などライダーに所縁ある名の商品も並ぶ。

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