地球温暖化でコーヒー絶滅か|クシタニカフェの豆を焙煎している職人談~10話~

地球温暖化でコーヒー・アラビカ種絶滅の危惧も

今回は、ちょっと硬いお話を。
イギリスのグラスゴーでCOP26が開催された事は、記憶に新しいと思います。
COP26とは「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議」の事で国連の気候変動枠組条約
に参加している国が集まる会議です。今回で26回目だから26とついています。
日本でも1997年に京都で開催されました(COP3)。一度は聞いたことがある「京都議定書」は、この時に採択された約束でした。
「京都議定書」もとやかく言われていますが後の「パリ協定」へと繋がっていきます。
簡単に言うと地球の温暖化(学者により温暖化している、していないと諸説ありますが)について、みんなで進行しないように頑張りましょう!と言う会議でした。

この話とコーヒーとどんな関係があるか?と言うと・・・

今から15年ぐらい前に既に「このまま地球の温暖化が進むと2035年には、コーヒー・アラビカ種は絶滅する」というニュースが流れました。
なぜ、絶滅してしまうのか?と言うと「サビ病」という病気のためです。

さび病2サビ病に侵されてしまったコーヒーの葉。葉肉は浸食され、光合成ができなくなり、枯れていく

サビ病は、カビの一種なので高温・多湿を好み繁殖します。中米などは、標高の低いところでは既にかなりのダメージを受けています。
気候変動は、中米でも顕著に現れています。もともと四季がない中米は、乾季と雨季の二季で乾季はほとんど雨が降らずカラカラで、
雨季はスコールが何度も来てジメジメと言うハッキリした感じですが、ここ最近は乾季に突然雨が降ったり、雨季に何日も雨がなかったりとそのメリハリが無くなりつつあるようです。
こうなると、一年中なんとなく高温・多湿の状況になりサビ病が蔓延しやすい気候になってしまいます。
今のところ比較的に標高の低いところで顕著ですが、最近はその影響が高度を上げつつあるのです。

中米などの産地は、産地が山岳地帯なので標高が高くなると畑の面積が徐々に小さくなってしまいます。(三角形の頂点に向かっていく感じ)
頂点のてっぺんまで進んでしまうと絶滅してしまいます。

この様な気候変動は、コーヒーの味わいにも影響が及びます。
コーヒーは、1日の寒暖差と乾季・雨季のメリハリが、良い風味特性を作り出しますが、このメリハリが曖昧になるにつれて個性的な風味特性も薄れつつあります。
この状況をなんとか改善しようとして生産者は、収穫後のプロセスを色々と工夫する様になってきました。
ワインの醸造からヒント得たカーボニックマセレーション、バクテリアを使ったアナエロビック、イースト菌を使ったイーストファーメンテーション・・・等々
少しでも良い風味特性が出る様に頑張っています。
どれも少し人為的な感じがしますが、既にそのぐらいの事をしないと行けないほど影響が出始めているということです。
世界的な気候変動とコーヒーの関係についてお話ししました。

*WCR(World Coffee Research)と言う国際的な機関がサビ病や高温多湿に対抗性のある品種を作る為に鋭意品種改良中です。

コーヒー屋ポンポン


羽田圭伸(はねだ けいしん)
静岡県浜松市のスペシャルティコーヒー豆専門店「コーヒー屋ポンポン」のマスター。自身もバイク乗りで、店名のポンポンは遠州地方の言葉でバイクの意。クシタニ カフェのコーヒーの監修とコーヒー豆の供給を行う。ジャパン・バリスタ選手権審査員、カップ・オブ・エクセレンス国際審査員。店内にはオリジナルブレンドで人気の「カフェ・ポンポン」をはじめ、「カフェ・ガードナー」「カフェ・クロスビー」「カフェ・ロッシ」などライダーに所縁ある名の商品も並ぶ。

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