クシタニがサポートするアジアのヤングライダー特集第2弾。第1弾では、アジアロードレース選手権(ARRC)スーパースポーツ600(SS600)クラスに参戦するA.P.Honda Racing Thailandの栗原佳祐選手にインタビューしました。
今回は、クシタニのレーシングスーツでARRC SS600にYAMAHA Racing Team ASEANから参戦するケミン・クボ選手のインタビューをお届けします。なお、こちらの取材はARRC第6戦タイラウンドの初日に行ったものです。
クボ選手は日本人の父親とタイ人の母親を持つ、19歳。2016年にはTeam Norikに大抜擢。Team Norikは元MotoGPライダーで2007年に不慮の事故で他界した、ノリックこと阿部典史さんがMotoGPチャンピオン育成を目的に立ち上げたチームです。以来、クボ選手は日本でレースの実績とトレーニングを積んできました。現在も日本を拠点に置き、レースに参戦しています。
2018年はARRCと全日本ロードレース選手権J-GP2にダブルエントリー。ARRCは第3戦日本ラウンドのレース2で2位表彰台を獲得するなどしてランキング10位、全日本J-GP2ではランキング11位でシーズンを終えました。
ダブルエントリーではアジアと日本を行き来してレースに参戦し、加えてマシンの乗り換えも要求されます。ARRCのSS600マシンと全日本J-GP2マシンはともに600ccマシンですが、レギュレーションが異なるためです。
しかしクボ選手はあっけらかんと「マシンの乗り替えの苦労はそれほどありません」と笑います。
「僕はすぐにマシンに合わせられるタイプなんです。(ARRCと全日本では)マシンのキャラクターも違うし、ついているパーツも違います。でも、特に問題はないと思います」
「僕はいろいろな新しいことを受け入れることができる、オープンなタイプだと思っています。今までわからなかった新しいことを吸収して選択肢を試し、そのなかからいいものを選ぶことができます。よりよいものを、積極的に取り入れていけると思います」
自身を柔軟なタイプだと分析するクボ選手。それでも、ARRCと全日本のレース環境の違いには難しさを感じているようで、「どちらのレースも、自分のなかで整理して頑張らないといけません」と言います。
また、2018年のARRCではマシントラブルなどに悩まされることもあったようです。
「2年間(日本で)トレーニングしてきて、2018年はシーズンの始めからそこで学んだことを活かしてかなりレベルアップできていると思います。ただ、シーズン中はマシンの問題などがかなりありました。(第5戦)インドネシアも、レース1はマシントラブルでコースアウトしてしまったんです。チーム内やマシンセッティングはまだまだ改善点があると思っています」
そんなクボ選手が目標とするのは、どんなライダーなのでしょうか。
「(ホルヘ・)ロレンソ選手です。アグレッシブだし速い。ロレンソは一番速いライダーではないけれど、乗り方が丁寧なんです。技術もセッティングなども細かいですしね」
MotoGPライダーのロレンソ選手は、これまでにMotoGPクラスで3度のチャンピオンに輝いたトップライダーのひとり。2018年シーズンにはドゥカティ・チームから参戦し、2019年シーズンからはレプソル・ホンダ・チームでマルク・マルケス選手のチームメイトとなります。
「今年に入ってから僕もロレンソ選手のように、丁寧にセッティングも細かいところまで考えています。そのおかげで、前よりもタイムも安定するようになったんです。僕はかなりアグレッシブなライダーでしたが、丁寧に乗るようになりました」
「今年、少し成長できたのはタイヤのマネージメントなんです。タイヤが消耗した後半でもペースアップできるようになりました。自分の走り方や、タイヤの使い方が変わったのだと思います」
今後の目標についても、クボ選手は世界を見すえています。
「ライダーとしての目標は、MotoGP参戦です。でもひとまず次のステップとしてはMoto2を目指したいと思っています。そしてMoto2でトップまでいきたいですね。自分の能力、ポテンシャルとしては、Moto2にいける自信があります」
そう受け答えをするクボ選手の表情はとても自然なもの。クボ選手の目は、すでにMotoGPへの道筋をはっきりと見すえているようでした。
インタビューでは茶目っ気もありながら、「趣味はMotoGPゲーム。イメージトレーニングをしています」とレーサーとして勤勉さも垣間見せたクボ選手。今後、活躍を期待したくなるライダーです。
ケミン・クボ選手(ARRC SS600/YAMAHA Racing Team ASEAN)
1999年生まれ。日本人の父親とタイ人の母親を持ち、現在は拠点を日本に置き活動中。
<戦績>
2017年:ARRC SS600 ランキング17位/全日本J-GP2 ランキング10位
2018年:ARRC SS600 ランキング10位/全日本J-GP2 ランキング11位