世界を目指すアジアのヤングライダー特集3:サラプーチ選手、イズディハール選手、アーレンズ選手

クシタニがサポートするアジアのヤングライダー特集第3弾。第1弾では2018年シーズン、アジアロードレース選手権(ARRC)スーパースポーツ600(SS600)クラスに参戦したA.P.Honda Racing Thailandの栗原佳祐選手、第2弾では同クラスに参戦したYAMAHA Racing Team ASEANのケミン・クボ選手にフォーカスしました。

第3弾はクシタニのレーシングスーツを着て戦う、3人のアジア人ライダーをご紹介。ARRC アジアプロダクション250(AP250)クラスのムクラダ・サラプーチ選手(A.P.Honda Racing Thailand)、SS600クラスのアンディ・ファリド・イズディハール選手(Astra Honda Racing Team)、AP250クラスのレーザー・ダニカ・アーレンズ選手(Astra Honda Racing Team)のインタビューをお届けします。なお、こちらの取材はARRC第6戦タイラウンドの初日と2日目に行ったものです。

ムクラダ・サラプーチ選手(ARRC AP250/A.P.Honda Racing Thailand)

サラプーチ選手は25歳のタイ人ライダー。女性ライダーとして活躍するサラプーチ選手は、2015年にアジア・ドリーム・カップでチャンピオンを獲得。2016年には全日本ロードレース選手権併催のJP250国際ライセンス部門でランキング4位を獲得し、2017年からはAP250に参戦しています。

2018年には開幕戦タイラウンドのレース2で、女性ライダーとして初優勝を飾る快挙を成し遂げました。

そんなサラプーチ選手、レースを始めたきっかけを聞くと「子供のころにEVバイクに乗ってみたくて、友人に誘われて乗ってみたんです。そこでうまく乗れて、レースに参戦しないかと誘われました」と言います。

「最初は、A.P.Honda Racing Thailandのサテライトチームで走っていたのですが、ラタパー・ウィライローさんに会って、『彼のようになりたい、いろいろな国でレースをしたい』と思うようになったんです」

ウィライロー氏は2016年までロードレース世界選手権Moto2クラスで活躍したライダー。サラプーチ選手はウィライロー氏からさまざまなことを学んだそうです。今回取材を行ったARRC最終戦タイラウンドでも、レース後にウィライロー氏と熱心に話しこむサラプーチ選手の姿がありました。

「ラタパーさんはA.P.Honda Racing Thailandのコーチです。私がこのチームのライダーになったとき、さらにラタパーさんとコミュニケーションをとり、ラタパーさんのいろいろな経験を(聞いて)活かすことができるようになりました」

2018年にはスーパースポーツ世界選手権300(WSS300)で、アナ・カラスコ選手がモーターサイクルの世界選手権として初めてチャンピオンに輝いた女性ライダーとなりました。2019年には、新たに始まる電動バイクレースFIM Enel MotoE World Cupに、マリア・エレーラ選手が参戦します。世界で活躍を見せる女性ライダーに、サラプーチ選手は「もし一緒に参戦できるなら、挑戦してみたいです」とも話します。

アジアの女性ライダー筆頭の存在として、サラプーチ選手は挑戦を続けていくことになるのでしょう。

ムクラダ・サラプーチ選手(ARRC AP250/A.P.Honda Racing Thailand)
1993年9月8日生まれ。タイ人。目標とするライダーはMotoGPライダーのマルク・マルケス。マルケスの乗り方を学んでいきたいそうです。
<戦績>
2015年:アジアドリームカップ チャンピオン
2016年:全日本併催JP250 ランキング4位
2017年:ARRC AP250 ランキング10位
2018年:ARRC AP250 ランキング7位

アンディ・ファリド・イズディハール選手(ARRC SS600/Astra Honda Racing Team)

イズディハール選手は21歳のインドネシア人ライダー。2017年にCEVレプソルインターナショナル選手権(CEV)Moto3に参戦し、2018年からはARRCのSS600にエントリー。また、2018年はHonda Asia-Dream Racingから鈴鹿8時間耐久ロードレースにも参戦しました。

最終戦タイラウンドの前戦、母国ラウンドである第5戦インドネシアラウンドでは、レース1、レース2ともに制してダブルウインを達成してタイに乗り込んできました。インタビューで向かいあったイズディハール選手はとても穏やかな物腰。質問にもひとつひとつ考えながら丁寧に答える姿が印象的でした。

「(前戦のダブルウインは)とてもうれしかったです。インドネシアは母国で走り慣れていたサーキットではありますが、それほど得意なサーキットではなかったんですよ」

そんなイズディハール選手がレースを始めたのは、小学生のときだったそうです。

「小学2年生か3年生くらいのとき、親戚がライダーとして走っていたので、(サーキットに)連れて行ってもらいました。それでバイクに興味を持ったんです。親戚のバイクを借りて、走るようになりました」

「そのうちに父が『レース好きなら、バイクを造ってあげよう』と言ってくれて、11歳からアンダーボーンに参戦するようになったんです」

目標とするライダーについて聞くと、「ケーシー・ストーナー元選手です」という答え。ストーナー元選手はMotoGPで2007年、2011年とチャンピオンに輝いたライダー。2012年シーズンをもって、惜しまれながらも現役を引退しました。その後はホンダ、ドゥカティのテストライダーとして活躍し、2015年には鈴鹿8耐に参戦も果たしています。

「(ストーナー元選手は)たくさんの記録を持っているライダーです。天才ですよね」とイズディハール選手。

今後、イズディハール選手はどのような目標を掲げているのでしょうか。

「毎年毎年、自分のスキル、参戦クラスもより高いところを目指しています。来年も、より高いところに参戦できるように頑張っていきたいです」

そう物静かに答えるイズディハール選手は、堅実にひとつひとつの階段を上っていくのでしょう。

アンディ・ファリド・イズディハール選手(ARRC SS600/Astra Honda Racing Team)
1997年生まれ。インドネシア人。趣味はサッカーだそうで、チームプレイで戦うのが楽しいと話していました。
<戦績>
2015年:アジア・タレント・カップ ランキング9位
2016年:アジア・タレント・カップ ランキング3位
2017年:CEV Moto3 ランキング17位
2018年:ARRC SS600 ランキング5位

レーザー・ダニカ・アーレンズ選手(ARRC AP250/Astra Honda Racing Team)

アーレンズ選手は20歳のインドネシア人ライダー。2018年、参戦2年目のAP250では最終戦を残して第5戦インドネシアラウンドでチャンピオンを獲得しました。非常にストイックな印象のライダーで、ピットでは常に厳しい表情を見せていました。

「2017年はサーキット慣れてなかったところもありましたが、2018年はある程度サーキットにも慣れ、昨年の経験を踏まえてチャンピオンとりたいという気持ちでシーズンインしました」

トレーニングでも自分を追い込んでいったと、アーレンズ選手は言います。

「2018年はレースが終わってから振り返って、すぐに足りない部分を(トレーニングで)フォローするようにしました。メニューも厳しくするようにしたんです」

その結果、アーレンズ選手は全6戦12レースで6勝を含む9度の表彰台を獲得。シーズンを席巻する形でチャンピオンを手にしました。

アーレンズ選手はどんなきっかけで、レースに参戦するようになったのでしょうか。

「父が地元のレースチームのメカニックだったんです。6歳のとき、レースイベントに連れて行ってもらって、自然に興味を持つようになりました。6歳でバイクにも乗りました。そこからプロになろうと思うようになったんです」

インタビュー中も常にサーキットに目をやり、ほかのライダーの走りを見つめていたアーレンズ選手。その表情から、チャンピオンを獲得しても決して満足せずにさらなる高みを目指そうとしている様子がうかがえました。そんなアーレンズ選手が目標とするライダーは誰なのでしょう。

「(ホルヘ・)ロレンソ選手です。たまにレース中にミスをしても、追い上げてトップ争いをします。すごく憧れていますね。今までテレビしかMotoGPを見たことがありませんが、ロレンソ選手は予選、決勝と改善していくんです。自分もそういうライダーになりたいと思っています」

今後の目標について聞くと、「(AP250で)チャンピオンを獲得した次のステップとして、MotoGPを目指したいです」という答え。

「ただ、MotoGP参戦までにステップが必要です。2019年はより高いクラスに参戦できるようにしたいと思います」

MotoGPライダー、アーレンズ選手の誕生に期待がかかります。

レーザー・ダニカ・アーレンズ選手(ARRC AP250/Astra Honda Racing Team)
1998年生まれ。インドネシア人。同じインドネシア人ライダーのイズディハール選手とは地元のアンダーボーンレースでライバル関係だったそうです。
<戦績>
2017年:ARRC AP250 ランキング4位
2018年:ARRC AP250 チャンピオン

写真:A.P.Honda Racing Thailand、Astra Honda Racing Team

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