積み重ねてきた小椋選手のレーシングスーツ製作10年目
小椋藍選手がクシタニのレーシングスーツを着用し始めたのは、2017年、MotoGPへの登竜門であるCEVレプソル Moto3ジュニア世界選手権の参戦時です。
「クシタニを最初に着たときの印象はとにかく柔らかかったですね。そして、単純に動きやすいっていうのがあって、それを覚えています。
小排気量の時はオートバイに力がないから結構空力とかも重要で、できるだけバタつかないようにと部分的なオーダーをしたことはあったと思います。ちょっとタイトにしたりとか、Moto3のときが要望は多かったかもしれません。
クラスが大きくなるにつれては、特にそういうこともなくて、自分の動きやすい、自分のサイズのまま作ってもらったものが一番自分としては着やすかったので、なにか要望を言うことはなくなりましたね」
小椋選手のスーツは専任の職人が手がけており、長年の付き合いもあって要望などはよく理解しているという背景もあります。
一方で、MotoGPに上がるタイミングでは、排気量も馬力も大幅にアップしたバイクでレースになるため、小椋選手の体格も変化していくのでは?という話題が、職人の間で出たこともありました。しかし、私たちの予想は杞憂に終わり、小椋選手のスーツのサイズ感はほぼ変化していません。
「MotoGPになって多少(身体が)大きくなったところはあるけれど、そんなに変わってないですね。体格が大きいMotoGPライダーのなかでは小さい方ですが、でもそれでマシンに乗る上で特に問題は今のところないです。問題ないから、これでいいと思っています」
MotoGPに昇格してから使い始めたパームガード
「MotoGPに昇格してから、手のマメがつぶれたりするようになっちゃって。Moto3やMoto2ではそんな風になったことなかったんですけど…。
だから、いまはレースの時はパームガードは必須です。トレーニングでは使わないけど、レースの時には欠かせません。MotoGPライダーも装着している人多いですよね、あるとないでは全然違うんです」
手のひらのマメがつぶれるのを防ぎながら、指先の長さでグローブを合わせた時に手の厚みが足りなくてダブつきやゴロつきが発生する場合にも有効なパームガード。なかなか表立って見ることがないアイテムですが、MotoGP装具の一つといえます。
新品でも身体になじむフィット感の良さ
レーシングブーツはクシタニとアルパインスターズのコラボレーションモデル「SUPERTECH R2 × ProtoCore Leather(7701)」(トゥースライダーがついていないプロライダー仕様)を着用いただいています。
「やっぱりレーシングスーツと同じで、革はものすごく柔らかい印象ですね」。多くのライダーが新品ギアの「慣らし」に苦労する中、小椋選手の場合は事情が違うようです。
「新品から特に違和感なくスタートできるような…新品でもレースに使えるぐらいの感じです。何回か走行して馴染んだような感覚が新品の時からありますね」と、プロトコアレザーの機能性に太鼓判をいただきました。
「何者でもなかった頃から支えてくれた」と語る姿勢
来季からはヤマハのファクトリーライダーになることが決まり、ヘルメットなど装備も日本メーカーが中心です。この点について「日本人だから日本メーカーで、ということは意識にありますか?」と投げかけると、小椋選手らしいニュートラルな返事がかえってきました。
「日本メーカーだから…ということは特にないですね。クシタニもアライヘルメットも、自分が何者でもなかった時からサポートしてもらってきたので、いつか世界の大きな舞台で一緒に走れたら…みたいなことは漠然と思っていました。だから、MotoGPでそれがかなったことは嬉しいです」
プロライダーとして機能面における満足というのは最低限必要なラインはあると思いますが、彼自身が大切にしている一面として「支えてくれた相手を信頼する」という一貫した姿勢が感じられた瞬間でした。
クシタニを着用する以前は、お下がりの装具で練習を積み重ねてきたという小椋選手。この日も桶川スポーツランドには、小椋選手の幼き頃を彷彿させるような小さなライダーもバイクを駆っていました。
レースというのはライダーだけでは決して成立しません。人が集い、勝利という目標に向かい一丸となって挑戦するチームを結束し、さらにライダーやそのチームをサポートするために多くの人が関わる世界です。
その世界で、クシタニができることはライダーの闘志と運動性を損ねることなくバイクに乗ることができるレーシングギアを実直につくり続けること。そして、そのための研究と開発の歩みを止めることなく、進化を続けることです。これからも小椋選手をはじめ、クシタニは世界に挑戦する若きライダーを支える存在でありたいと願っています。