48歳、これからのスポーツライディングを考える|第1回【HSR九州で開催される鉄馬にコンチネンタルGT650で参戦! 新た仲間との出会いとバイクを仕上げる楽しみ】

サーキットを走るスポーツライディングは今も大好き。しかし、ハイパワーなスーパースポーツ&ハイグリップタイヤでレースに挑むのはちょっとリスキー……。そんな気持ちが芽生えつつある心境や年齢になってきた。そこで選んだのが、空冷ツイン、鉄フレーム、18インチホイールのロイヤルエンフィールドのコンチネンタルGT650で走る九州HSRのイベントレースである鉄馬。このパッケージでどこまでいけるか挑戦!

なんでロイヤルエンフィールド? なんでコンチネンタルGT650?

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小川勤|TSUTOMU OGAWA

バイク専門誌に25年ほど携わり、10年ほど編集長を経験。その間、国内外の様々なバイクに試乗。2022年よりフリーランスのジャーナリストに(身長165cm)。

2023年、僕はHSR九州で開催されている鉄馬というイベントレースに、ロイヤルエンフィールドのコンチネンタルGT650で参戦することにした。本人にあまり自覚はないものの、年齢的には大人。バイク業界に入り28年ほどが経過し、大人が本気でサーキット遊びに興じるその姿を度々見てきたが、僕もその仲間に入ってみたくなったのだ。

最新のハイパワー&制御満載のスーパースポーツは確かに魅力的だ。でもそれは走行会の話で、レースとなると話は別。ツーリングもサーキットも長いスタンスで楽しめるバイクが僕の趣味人生の中で現実味を帯びてきている。そして候補に上がったのがロイヤルエンフィールドのコンチネンタルGT650。英国カフェレーサースタイルのネオクラシック。一見、サーキットと対極にいるバイクである。

ことの発端は2022年8月に人生で初めてインドに行ったことに遡る。ロイヤルエンフィールドのヒマラヤというバイクでヒマラヤ山脈を駆け登り、バイクの新しい世界観を発見。そこから加速的にロイヤルエンフィールドとの接点が増え、EICMA2022のプレスカンファレンスに行ったり、2023年1月にはスーパーメテオ650のワールドローンチにも参加させてもらった。

本国のメンバーは活気に溢れ、みんなが同じ目標に向かってバイクを作っているのが伝わってくる。「ピュアモーターサイクリング」そのわかりやすいスローガンをみんなが口にしている。実際、近年のロイヤルエンフィールドのバイクは完成度が高く、僕自身も「これはもっと多くの方に知って欲しい」と思ったのだ。

いつかは日本でもコンチネンタルGT650のワンメイクレースを!

さらに色々と調べるとインドではロイヤルエンフィールドのコンチネンタルGT650を使ったワンメイクレースを開催。アメリカではコンチネンタルGT650を使った女性のみのレースも行われている。とにかく調べるほどに面白いメーカーだなぁと思っていた時に、日本のディトリビューターであるピーシーアイの高永さんから「コンチネンタルGT650でレースやる?」となったのがこのプロジェクトのきっかけで、もちろん僕は即答。その場で熊本のバイクショップであるモトジャンキーの中尾さんに電話をして4月の鉄馬参戦が決定。これが2022年9月のことだ。

鉄馬の開催場所は九州のHSR。参戦するクラスはACT18(エア・クールド・ツイン=空冷2気筒の18インチ以上)。クラシカルなテイストを貫くバイクづくりを徹底するロイヤルエンフィールドに最適だと思った。

熊本のバイクショップであるモトジャンキーの中尾さんと。今回のためにクシタニにはレザースーツのロゴ入れをお願いし、アライヘルメットは専用デザインを用意してくれた(どちらもデザインはシンイチロウ アラカワの荒川眞一郎さん)。

しかし、レースは一人ではできない。時間はありそうでない。また18インチホイールということでタイヤはピレリにオーダー。マシンは急ピッチでモトジャンキーが制作を進めてくれた。

開催場所が九州ということで、テストに行くのも大変。1回で凝縮したテストをしなければならない。まずはノーマルの素性を確認するため、というかコンチネンタルGT650がサーキットを走れるバイクなのかを確認するために九州に飛んだ。ちなみにHSRを走るのは2回目だが、前回の記憶はほとんどない……。

コンチネンタルGT650のエンジンは空冷の648ccパラレルツイン。クラシカルな見た目だが、270度クランクを採用した不等間隔爆発で、設計は最新。

ロイヤルエンフィールドの輸入元である高永さんと。「コンチネンタルGT650でレースをやってみない?」と誘っていただいた。

素性の良いエンジンとシャシー、これはイケる⁉︎

648ccの空冷ツインエンジンをサーキットで走らせて楽しいのだろうか? 市街地やツーリングでの気持ちよさや加速感はよく知っている。でもサーキットではどうだろう? まったく想像がつかない。

ピレリ製のファントム スポーツコンプRSを履いたノーマルのコンチネンタルGT650がHSRのパドックに佇む。カフェレーサーならではの美しさは完璧だ。走り出すと270度クランクを採用する不等間隔爆発のツインエンジンは、スロットル開け始めのトラクションする感じが抜群に良い。車体は若干重量を感じるものの、フレーム剛性は高く、ライダーの要求に良いレスポンスで応える。バイクとの駆け引きが楽しく、それはネオクラシックルックであることを忘れさせるほどスポーティ。手応えを感じつつ、今後のチューンの方向性も見えてきたファーストコンタクトだった。

走行後、今後のプランの進め方をモトジャンキーの中尾さんと相談していく。カスタムバイクやレーサー制作ってとても難しい。でも中尾さんは僕の意見を色々と聞いてくれるし、好みを話すとすぐに理解し、策を考えてくれるのだ。

だからその次のテストは一気にバージョンアップ。前後サスペンションやブレーキ周り、マフラーやバッテリーで20kgほどの軽量化を実現。バイクはとても良くなっているのだが、僕が直面したのはHSRのコースの難しさである。HSRは速度レンジはそれほど高くないのだが、ブレーキングしながら切り返したり向きを変えたりする場所があり、さらには高低差もあり攻略がとても難しいのだ。

そんなところにたまたまスポーツ走行に来ていたドゥカティ鹿児島の永田社長が……藁にもすがる思いで引っ張ってもらうことに。永田さんのおかげでなんとかリズムが掴めてきたような気がする。

しかし、次の走行はレースウィークである。

AELLA(アエラ)ブランドでお馴染みのカスノモーターサイクルの青木さん(真ん中)がパーツ制作で色々と協力してくれた。

ステップやハンドル、タンクエンドのストッパーはアエラ製。すべてプロトタイプとなる。

48歳、これからのスポーツライディングを考える|第2回【HSR九州で開催される鉄馬コンチネンタルGT650で参戦! 決勝レースはBMW R75/5と一騎打ち】に続く。

まだまだレースのデータがないため、すべて手探り状態でスタート。モトジャンキーが短期間でここまで仕上げてくれた。

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