注目のニューモデルの実力を斬る HONDA CL250/CL500編

CLの歴史を振り返る

ホンダが【CL】の名を初めて使ったのは1962年に登場した『ドリームCL72スクランブラー』からだ。道路の舗装率が今よりもはるかに低かった1960年代は、今のように未舗装路に特化した『オフロードバイク』という概念はなく、バイクはダートも舗装路も走る乗りモノだった。そんな中で生まれたのが、スクランブラーというジャンルだ。

[HONDA]DREAM CL72 SCRAMBLER​
[HONDA]DREAM CL72 SCRAMBLER​

スクランブルレースという、オフロードレース(今でいうところのモトクロス)のために、オフロード走破性を求めてマシンをチューニング。エキゾーストパイプをサイドまわしにして、最低地上高を確保。外乱を抑え込むために幅広ハンドルに換装するなど、オフロード性能をアップさせたマシンをスクランブラーと呼んだのである。ホンダはCL72以降にも1970年代にCLの名を冠したモデルをリリースしたが、それと同時にオフロードを主軸に開発したXLシリーズも送り出す。1980年に入るとCLの名は姿を消すが、1990年代後半にレトロブームの影響で1997年にベンリィCL50、1998年にCL400が登場。この2台は短命に終わった。

HONDA CL50
[HONDA]BENLY CL50
[HONDA]CL400
[HONDA]CL400

再燃するスクランブラーブーム

2010年代中頃になると、スクランブラーブームが到来する。キッカケはドゥカティが送り出した『スクランブラー』だった。ドゥカティも過去にスクランブラータイプのマシンをリリースしており、そのときのマシンをオマージュしつつ、現代の技術を盛り込んだ(エンジンは空冷4ストロークV型(L型)2気筒・803㏄)。

[DUCATI]SCRAMBLER ICON
[DUCATI]SCRAMBLER ICON

このモデルが世界的にヒットした。火付け役のドゥカティは、803㏄エンジンを主軸にバリエーションモデルを展開。その他にも空冷4ストロークV型(L型)2気筒・399㏄エンジンを搭載するスクランブラー・シックスティ2や、空冷4ストロークV型(L型)2気筒・1,079㏄エンジンを搭載するスクランブラー1100をリリースした。他メーカーもドゥカティに対抗すべく、スクランブラーモデルを展開。ただ海外メーカーが中心で、ホンダを含めた国内メーカーは参入していなかった。

ついにホンダがスクランブラーを送り出す

世界的にスクランブラーブームが盛り上がる中、ホンダは2022年11月に開催されたイタリアのモーターサイクルショー【EICMA・通称ミラノショー】で、CL500を披露し、同時に日本国内ではCL250が姿を現したのである。その時点で詳細は発表されなかったが、レブルシリーズがベースになっているのは伺えた。スクランブラーモデルに興味を持つライダーは『詳細なスペックは?』『いつ発売になるのか?』と気になったことだろう。その時点で2023年に発売されるだろうとの予想はついたが…。

そして2023年のバイクシーズンイン前に開催された大阪モーターサイクルショーを皮切りにその姿が大勢のライダーに披露され、予想どおりCL250が5月18日から、CL500が5月25日から発売がスタート。

気になる新生CLシリーズの乗り味は?

CL250とCL500の実車を目の前にすると海外メーカーのスクランブラーモデルと比べて車格が極端に大きいとも小さいとも感じない。ただCL250に関しては単気筒エンジンであることから、車体を取りまわしただけでも軽さが際立つ。一方CL500に関してはスクランブラーモデルとしては平均的だと感じた。

乗り味に関して気になったのが、CLシリーズは幅広ハンドルにサイドアップのサイレンサー、フロント19インチホイール。リヤ17インチホイールと、現代のスクランブラーモデルのツボを押さえているものの、ベースがオンロード、しかもクルーザーのレブルシリーズだということ。見た目がスクランブラーでも、オンロードに軸足を置いているモデルも多い。CLシリーズの『ダート性能はどうなのか』についても探ってみようと思う。

まずはオンロードから。CL250・CL500ともに車体は同じ。CL500の方が20㎏車重は重いが、大型二輪としては軽量な部類に入る。街乗りならCL500は重さを感じることなくヒラヒラと走れるし、それ以上に軽いCL250は言うまでもない。どちらも低回転域からトルクが出ているので、気兼ねなく走れる。

高速道路走行の安定性も悪くない。ちょっとしたギャップを通過しても振られることなく安心して走れる。ただ余裕という面ではCL500の方に分があるのは、排気量面から仕方がない。追い越しや加速は明らかにCL500が上で、長距離を走ったときの疲労に差が出るだろう。ただ、だからといってCL250が高速道路では走らないと言っているわけではない。排気量を考えれば十分なレベルで、CL500と比較したら、の話だ。

ワインディングでは前後17インチのように鋭いコーナリングを味わえる…、というわけではない。フロント19インチホイール。・リヤ17インチのホイールサイズとホイールベースのため”穏やか”と表現したいところ。ただ前後17インチホイールのスポーツモデルから乗り替えても、へんなクセがあると感じることはない。深くリーンさせても不安定になることないので、マシンなにりペースを上げて楽しむことができる。ブレーキも不満のないストッピングパワーとコントロール性を持つ。排気量差に関して言えば、やはりココでもCL500の方がパワーがあり、ビギナーでも扱いやすい出力特性なので、ワインディングを楽しみたいならCL500を選びたいところ。

気になる新生CLシリーズの乗り味は?

続いてダートに持ち込んでみた。フラットな部分もあるが、ゴロゴロした石が多いガレた河川敷だ。筆者はオフロード初心者でなはないが、上級者でもない。そんな筆者でもフラットな部分であれば、どちらも不安なく走れた。ただガレてる部分では、CL250の方が安心感が高い。トレールモデルやオフロード競技車両と比べれば足つき性はいいのだが、バランスをくずしたときにリカバリーしやすいからだ。ただオフロード上級者なら、CL500を選んで排気量差のパワー活かして砂ボコリをたてながら走ったり、車重の重さを制御しながら振り回しす楽しさを味わえるだろう。これまで乗ってきたスクランブラーの中には、見た目はスクランブラーで乗った感じはオンロードスポーツバイク寄りといったモデルもあったが、CL250・CL500どちらも、ある程度のダート性能は確保されていると感じた。ある程度というのは、トレールモデルと比較しての話だが。

気になる新生CLシリーズの乗り味は?

所持している免許もあるが、気軽さなならCL250を、余裕を選ぶならCL500といったところ。どちらもビギナーが不安なく扱え、ベテランが潜在能力を引き出して楽しめる懐の広いマシンだ。クルーザーのレブルベースだが、それを感じさせないほど、しっかりとスクランブラーに仕立て上げられていた。スクランブラーモデルをねらっている人は、CLシリーズを選んでも後悔することはないだろう。

POSITION & FOOTHOLD[171㎝・70㎏]

※写真はCL250

CL500足着き

CL500足着き

足つき性とライディングポジションに関しては排気量による違いはない。シート高は790㎜と、ネイキッドモデルと変わらない数値。決して足長ではない筆者でも、両足カカトまでベッタリと接地する。乗車姿勢に関しては上半身をほぼ背筋を垂直にできるため、腰への負担を小さくできる。ステップはお尻の真下で踏みこむ力を入力しやすい。ちなみに筆者より大柄な人はやや窮屈に感じるかもしれないが、オプションでハイシートが用意されているので、そちらに付け替えるというのもありだろう。

ディテール紹介

※写真はすべてCL250

CL250フレーム
フレームはレブル250/500をベースにしているが、そのままCL250/500に転用しているわけではない。赤い部分のシートレールはCLシリーズに合わせて新造されているのだ
CL250に搭載されるエンジン
CL250に搭載されるエンジンは、CBR250Rで誕生し、CRF250L→レブル250と受け継がれた単気筒エンジン。CL250にはCRF250Lのカムシャフトや専用吸気ダクトで低中速トルクを豊かにした。CL500には熟成を重ねた並列2気筒エンジンが搭載される。CL250と比較すれば、排気量ぶんだけの余裕がある。ただし、そのぶん車重は重いが
CL250のフロントホイール
フロントのキャストホールの外径は19インチで、サスストロークは150㎜確保されている。フロントブレーキはφ310㎜ローターと2ポットキャリパーの組み合わせ。レブルシリーズとフォークピッチやキャスター/トレールが異なる
CL250のスイングアーム
パッと見るとレブルシリーズと同じスイングアームに思える。しかしエキゾーストパイプが上に伸びるスペースを確保するために、その部分を内側に追い込んだCLシリーズ専用品が採用されているのだ
CL250のハンドルまわり
レブルシリーズはクルーザー定番のインチバーが採用されているが、CLシリーズは一般的なミリバーに変更。スクランブラーらしく幅の広いタイプがセットされている
CL250のステップバー
ステップバーはライダーのお尻の真下あたりにセットされる。トレールよりもネイキッドに近い位置だ。マスターシリンダーまわりのレイアウトは、レブルシリーズやトレールのCRF250Lとも異なる
CL250のシート
ライダーの座面のところだけがタックロールデザインで、タンデムシートより一段低くなっている。純正アクセサリーにハイシートになるフラットシートが用意されているので、オフ志向の人や体格の大きい人にはオススメだ
CL250のヘッドライトやウインカー
ヘッドライトやウインカーはレブルシリーズと共通。しかしブラケットは専用品で、レブルシリーズとオフセットが違うし、フォークピッチも異なる。CLシリーズに関しては、フォークブーツは標準装備だ
CL250のテールランプとウインカー
テールランプとウインカーはユニット化されフェンダーにマウントされているので、カスタムがしやすそう。テールランプの光源はLEDだ
CL250のメーター
φ100㎜と小型なメーターは反転液晶だが、視認性は良好だ。ギヤポジションインジケーター付きなのもうれしい。画面の下側に左右独立したウインカーのインジケーターがある
CL250メインキー
メインキーの場所はレブルシリーズと同じく、車体左側にレイアウト。メインフレームはレブルシリーズと共有しながらも、キャスターは37度・トレールは108mmと、マシンのキャラクターに合わせて最適化されている
CL250ハンドルロック
一般的なバイクのようにメインキー部でハンドルロックをすることができない。またがって右側のネック下にあるキー部分でハンドルロックをする。ココはレブルシリーズと共通だ
CL250クラッチ
アシスト&スリッパークラッチを採用しているから、レバー操作は軽くなっている。長距離走ったときに、疲労に差が出てくる。ただしレバー調整機能はほしいところ。オプションパーツに設定はあるが、標準装備を強く願う!
CL250タンク
一見するとレブルシリーズのタンクにパッドを貼っただけと思えるが、別モノになっている。レブルシリーズが11ℓなのに対して、CLシリーズは12ℓと容量アップ。WMTC値で計算すると、250が418.8㎞/ℓで、500が334.8㎞の航続距離になる
[HONDA]CL250
[HONDA]CL250
[HONDA]CL500
[HONDA]CL500

CL250/CL500主要諸元

CL250 CL500
2,175×830×1,135 全長×全幅×全高(㎜) 2,175×830×1,135
1,485 軸間距離(㎜) 1,485
790 シート高(㎜) 790
172 車体重量(㎏) 192
水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒 エンジン型式 水冷4ストロークDOHC4バルブ並列2気筒
249 排気量(㎤) 471
18kW(24ps)/8,500rpm 最高出力 34kW(46ps)/8,500rpm
23N・m(2.3kgf・m)/6,250rpm 最大トルク 43N・m(4.4kgf・m)/6,250rpm
12 燃料タンク容量(ℓ) 12
34.9㎞/ℓ 燃費(WMTC) 27.9㎞/ℓ
110/80R 19 タイヤサイズ(F) 110/80R 19
150/70R 17 タイヤサイズ(R) 150/70R 17
62万1,500円 価格 86万3,500円
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