CLの歴史を振り返る
ホンダが【CL】の名を初めて使ったのは1962年に登場した『ドリームCL72スクランブラー』からだ。道路の舗装率が今よりもはるかに低かった1960年代は、今のように未舗装路に特化した『オフロードバイク』という概念はなく、バイクはダートも舗装路も走る乗りモノだった。そんな中で生まれたのが、スクランブラーというジャンルだ。
![[HONDA]DREAM CL72 SCRAMBLER](https://www.kushitani.co.jp/logs/wp-content/uploads/2023/09/B_CL72-1024x683.jpg)
スクランブルレースという、オフロードレース(今でいうところのモトクロス)のために、オフロード走破性を求めてマシンをチューニング。エキゾーストパイプをサイドまわしにして、最低地上高を確保。外乱を抑え込むために幅広ハンドルに換装するなど、オフロード性能をアップさせたマシンをスクランブラーと呼んだのである。ホンダはCL72以降にも1970年代にCLの名を冠したモデルをリリースしたが、それと同時にオフロードを主軸に開発したXLシリーズも送り出す。1980年に入るとCLの名は姿を消すが、1990年代後半にレトロブームの影響で1997年にベンリィCL50、1998年にCL400が登場。この2台は短命に終わった。

![[HONDA]CL400](https://www.kushitani.co.jp/logs/wp-content/uploads/2023/09/D_CL400-1024x683.jpg)
再燃するスクランブラーブーム
2010年代中頃になると、スクランブラーブームが到来する。キッカケはドゥカティが送り出した『スクランブラー』だった。ドゥカティも過去にスクランブラータイプのマシンをリリースしており、そのときのマシンをオマージュしつつ、現代の技術を盛り込んだ(エンジンは空冷4ストロークV型(L型)2気筒・803㏄)。
![[DUCATI]SCRAMBLER ICON](https://www.kushitani.co.jp/logs/wp-content/uploads/2023/09/E_DUCATI-SCRAMBLER-ICON-1024x683.jpg)
このモデルが世界的にヒットした。火付け役のドゥカティは、803㏄エンジンを主軸にバリエーションモデルを展開。その他にも空冷4ストロークV型(L型)2気筒・399㏄エンジンを搭載するスクランブラー・シックスティ2や、空冷4ストロークV型(L型)2気筒・1,079㏄エンジンを搭載するスクランブラー1100をリリースした。他メーカーもドゥカティに対抗すべく、スクランブラーモデルを展開。ただ海外メーカーが中心で、ホンダを含めた国内メーカーは参入していなかった。
ついにホンダがスクランブラーを送り出す
世界的にスクランブラーブームが盛り上がる中、ホンダは2022年11月に開催されたイタリアのモーターサイクルショー【EICMA・通称ミラノショー】で、CL500を披露し、同時に日本国内ではCL250が姿を現したのである。その時点で詳細は発表されなかったが、レブルシリーズがベースになっているのは伺えた。スクランブラーモデルに興味を持つライダーは『詳細なスペックは?』『いつ発売になるのか?』と気になったことだろう。その時点で2023年に発売されるだろうとの予想はついたが…。
そして2023年のバイクシーズンイン前に開催された大阪モーターサイクルショーを皮切りにその姿が大勢のライダーに披露され、予想どおりCL250が5月18日から、CL500が5月25日から発売がスタート。
気になる新生CLシリーズの乗り味は?
CL250とCL500の実車を目の前にすると海外メーカーのスクランブラーモデルと比べて車格が極端に大きいとも小さいとも感じない。ただCL250に関しては単気筒エンジンであることから、車体を取りまわしただけでも軽さが際立つ。一方CL500に関してはスクランブラーモデルとしては平均的だと感じた。
乗り味に関して気になったのが、CLシリーズは幅広ハンドルにサイドアップのサイレンサー、フロント19インチホイール。リヤ17インチホイールと、現代のスクランブラーモデルのツボを押さえているものの、ベースがオンロード、しかもクルーザーのレブルシリーズだということ。見た目がスクランブラーでも、オンロードに軸足を置いているモデルも多い。CLシリーズの『ダート性能はどうなのか』についても探ってみようと思う。
まずはオンロードから。CL250・CL500ともに車体は同じ。CL500の方が20㎏車重は重いが、大型二輪としては軽量な部類に入る。街乗りならCL500は重さを感じることなくヒラヒラと走れるし、それ以上に軽いCL250は言うまでもない。どちらも低回転域からトルクが出ているので、気兼ねなく走れる。
高速道路走行の安定性も悪くない。ちょっとしたギャップを通過しても振られることなく安心して走れる。ただ余裕という面ではCL500の方に分があるのは、排気量面から仕方がない。追い越しや加速は明らかにCL500が上で、長距離を走ったときの疲労に差が出るだろう。ただ、だからといってCL250が高速道路では走らないと言っているわけではない。排気量を考えれば十分なレベルで、CL500と比較したら、の話だ。
ワインディングでは前後17インチのように鋭いコーナリングを味わえる…、というわけではない。フロント19インチホイール。・リヤ17インチのホイールサイズとホイールベースのため”穏やか”と表現したいところ。ただ前後17インチホイールのスポーツモデルから乗り替えても、へんなクセがあると感じることはない。深くリーンさせても不安定になることないので、マシンなにりペースを上げて楽しむことができる。ブレーキも不満のないストッピングパワーとコントロール性を持つ。排気量差に関して言えば、やはりココでもCL500の方がパワーがあり、ビギナーでも扱いやすい出力特性なので、ワインディングを楽しみたいならCL500を選びたいところ。
続いてダートに持ち込んでみた。フラットな部分もあるが、ゴロゴロした石が多いガレた河川敷だ。筆者はオフロード初心者でなはないが、上級者でもない。そんな筆者でもフラットな部分であれば、どちらも不安なく走れた。ただガレてる部分では、CL250の方が安心感が高い。トレールモデルやオフロード競技車両と比べれば足つき性はいいのだが、バランスをくずしたときにリカバリーしやすいからだ。ただオフロード上級者なら、CL500を選んで排気量差のパワー活かして砂ボコリをたてながら走ったり、車重の重さを制御しながら振り回しす楽しさを味わえるだろう。これまで乗ってきたスクランブラーの中には、見た目はスクランブラーで乗った感じはオンロードスポーツバイク寄りといったモデルもあったが、CL250・CL500どちらも、ある程度のダート性能は確保されていると感じた。ある程度というのは、トレールモデルと比較しての話だが。
所持している免許もあるが、気軽さなならCL250を、余裕を選ぶならCL500といったところ。どちらもビギナーが不安なく扱え、ベテランが潜在能力を引き出して楽しめる懐の広いマシンだ。クルーザーのレブルベースだが、それを感じさせないほど、しっかりとスクランブラーに仕立て上げられていた。スクランブラーモデルをねらっている人は、CLシリーズを選んでも後悔することはないだろう。
POSITION & FOOTHOLD[171㎝・70㎏]
※写真はCL250
足つき性とライディングポジションに関しては排気量による違いはない。シート高は790㎜と、ネイキッドモデルと変わらない数値。決して足長ではない筆者でも、両足カカトまでベッタリと接地する。乗車姿勢に関しては上半身をほぼ背筋を垂直にできるため、腰への負担を小さくできる。ステップはお尻の真下で踏みこむ力を入力しやすい。ちなみに筆者より大柄な人はやや窮屈に感じるかもしれないが、オプションでハイシートが用意されているので、そちらに付け替えるというのもありだろう。
ディテール紹介
※写真はすべてCL250














![[HONDA]CL250](https://www.kushitani.co.jp/logs/wp-content/uploads/2023/09/H-01_CL250-1024x683.jpg)
![[HONDA]CL500](https://www.kushitani.co.jp/logs/wp-content/uploads/2023/09/H-02_CL500-1024x683.jpg)
CL250/CL500主要諸元
CL250 | CL500 | |
---|---|---|
2,175×830×1,135 | 全長×全幅×全高(㎜) | 2,175×830×1,135 |
1,485 | 軸間距離(㎜) | 1,485 |
790 | シート高(㎜) | 790 |
172 | 車体重量(㎏) | 192 |
水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒 | エンジン型式 | 水冷4ストロークDOHC4バルブ並列2気筒 |
249 | 排気量(㎤) | 471 |
18kW(24ps)/8,500rpm | 最高出力 | 34kW(46ps)/8,500rpm |
23N・m(2.3kgf・m)/6,250rpm | 最大トルク | 43N・m(4.4kgf・m)/6,250rpm |
12 | 燃料タンク容量(ℓ) | 12 |
34.9㎞/ℓ | 燃費(WMTC) | 27.9㎞/ℓ |
110/80R 19 | タイヤサイズ(F) | 110/80R 19 |
150/70R 17 | タイヤサイズ(R) | 150/70R 17 |
62万1,500円 | 価格 | 86万3,500円 |