<Moto2> 小椋藍 今シーズン初優勝! あの日本グランプリ以来の歓喜

今シーズン初表彰台となったフランスGPから好調を持続した小椋

目の覚めるようなロケットスタートだった。

MotoGP第6戦カタルーニャGP。4列目10番グリッドからスタートした小椋藍は、レーススタートから1コーナーへのアプローチで、ほぼすべてのライダーが一度マシンをイン側に寄せてアウトへ膨らむところ、ただひとり大外のラインを選択。この選択がピタリと当たり、あわやホールショットというポジションで、1コーナーに3番手あたりで進入していったのだ。

「スタートがうまく決まったので、その後はいいペースで走ることができました」(小椋)

Moto2では当たり前のように繰り広げられる中団ポジションの大混雑を抜け、オープニングラップを4番手で終了。先頭はチームメイトのセルジオ・ガルシア、2番手にアルバート・アレナス、3番手にフェルミン・アルデゲル。4番手の小椋をはさんでセレスティーノ・ビエッティ、アロンソ・ロペス、ダニエル・ムニョス、アーロン・カネットが続く。現在のMoto2クラスのトップライダーたちだ。

ここから小椋は一度ポジションを落とし、6番手あたりで周回。4周目に5番手、6周目に4番手に浮上し、8周目あたりには小椋を追うアレナスに一秒近い差をつけてみせる。この時点のトップ争いはアルデゲル対ガルシアが一騎打ち、3番手にロペス、そしてロペスを追う小椋。

小椋は3周くらいをかけて11周目に3番手に浮上。前を行く2台までは2秒の差があり、Moto2のいつものレース展開から考えれば、なかなか追いつくのが難しい差だ。

転倒者やペナルティが続出するレースでクリーンで強い走りを見せた

しかし、このレースは転倒やペナルティが頻発するという側面があるレースだった。この日は気温が高く路面温度も上がり、カタルーニャのコースは滑りやすいことでも知られているからだ。レース序盤から転倒が多く、コース幅を目いっぱいつかうライン取りで「トラックリミット」違反、つまりコース外走行のペナルティが次々と宣告されていたのだ。

オープニングラップでソムキャット・チャントラ、イザン・ゲバラ、佐々木歩夢が転倒、その後もディオゴ・モレイラ、ムニョス、マニュエル・ゴンザレスが姿を消す中、まずジャウミ・メシアにトラックリミットワーニング(=マシンのディスプレイに「コース外走行の警告」が表示される)が出される。その後も、デニス・オンチュ、セナ・アジウス、デニス・フォッジア、バリー・バルタス、ホルヘ・ナバーロにもワーニング、さらにトップ争いをするガルシアにも出されてしまう。ワーニングが出された後、再びコース外走行をすると、コース外を大回りしなければならない「ロングラップペナルティ」が出されるのだ。

そして、ついに11周目にはオンチュにロングラップペナルティが出される。オンチュのタイムロスは7秒強、16番手から24番手までポジションを落としてしまう、これがトラックリミットワーニングの恐ろしさだ。

しかしロングラップペナルティはこれだけでは収まらず、アジウス、ムニョス、さらにトップを走行していたアルデゲルにもペナルティが出されてしまう。

15周目のコントロールラインを通過して、コース外のペナルティコースに入るアルデゲル。レースリーダーがガルシアに代わった瞬間、ペナルティコースでアルデゲルがスリップダウン! トップを走行しているライダーがワーニング→ペナルティ→転倒という信じられない展開になってしまうのだ。

その頃の小椋は、ワーニングを出されることもなく順調に周回。11周目にはロペスをかわして3番手に浮上すると、残り10周でアルデゲル、ガルシアまで約2秒。3周をかけてトップふたりまでの差を2秒以内に縮めたところで、アルデゲルが転倒してしまったのだ。

レースは残り7周。2番手に上がった時に1秒6ほどあった差をたちまち縮め、15周目には0秒8、16周目に0秒4、17周目にはほぼ背後につき、そのまま逆転してしまう。

#13ビエッティ、#54アルデゲルと競り合う小椋

「スタートでうまく前に出られた後は、タイヤをセーブするためにちょっとポジションを落として5~6番手を走っていたんですが、そこからみんなタイヤが苦しくなりはじめた頃に、僕のリアタイヤはまだグリップを残していたのでポジションをあげられました」

18周目にガルシアをかわしてトップに立ってからもペースを落とさない小椋は、2番手以降を突き放し、最終的に2位フィニッシュしたガルシアに3秒8の大差をつけて優勝。今シーズン初優勝は、2022年の、あの日本グランプリ以来の優勝だ。

「金曜、土曜と苦しんでいたから、まさかの優勝です!スタートでうまく前に出られて、そのあとまわりのライダーのタイヤがまだ生きているうちにポジションを落としたんですが、自分の状況もきちんと判断して走れていたし、でもアルデゲルとガルシアに追いつけるとは思っていなかった」

前回、今シーズン初表彰台の時のレポートでも記したが、この大会でも小椋のタイヤマネジメントのうまさが出ていたのだ。レース序盤、まわりのライダーのタイヤがフレッシュなうちにはタイヤを攻撃しない走りを心がけ、まわりのペースが落ち始めた頃にスパートする――今回のレースで言うと、4番手に上がった6周目に43秒台で走れていたのはトップ4人のみで、3番手に上がった11周目に43秒台で走ったのは小椋ただひとり。13周目からゴールまでは、全周回とも誰よりも速いタイムをマークしての鮮やかな優勝だった。

「(レース中盤ごろ)前を行くライダーが、特にコーナー出口で苦しんでいるのが分かった。その頃は僕のリアタイヤはまだグリップしていたし、今回はうまくタイヤマネージできた。2戦連続でチームの1-2フィニッシュできたのも良かったですね」

2戦連続で1-2フィニッシュを達成したMTヘルメッツMSI チームメイトのガルシアは現在ポイントリーダー。

普段はあまり感情を表に出さない小椋が、ウィニングランで何度も何度もガッツポーズし、パルクフェルメに戻ってからは、チームスタッフにもみくちゃにされながら、はじけるような笑顔を見せた。表彰台に上がる時には「ほら声援が足りないよー」とばかりに手を耳に当てるポーズを見せながら、笑顔で表彰台の一番高い場所へと歩を進めていた。

これでランキングは4位から3位にひとつ上がり、ポイントリーダーまでは26ポイント差から21ポイント差。次戦イタリアGPは、昨シーズンこそ負傷から復帰のきっかけをつかみ始めたレースだったが、22年シーズンには3位表彰台に登壇、一時的にランキングトップに並んだゲンのいいコース。

さらに、小椋が優勝したこの日、カタルニアから遠く離れた日本のほぼ同時刻に、小椋の姉であるオートレーサー小椋華恋(かれん)が、川口オートレース場で行われたG2レース「川口記念」で初優勝を達成! これはグレードレースという格式での優勝で、まだ経験したことがない8周回のレース。いわばG1に次ぐG2という格式は、MotoGPに次ぐMoto2と同じ……と言うとこじつけすぎだろうか。

「ちょうどタイミングよく、ふたりで優勝できてうれしいです。結果はちょうど同じ頃にレースがあったので、走り終わった後に優勝したことを聞いたんですが、すごくうれしいです」(小椋華恋・オートレース公式動画より)

華恋もスタートよく飛び出して、藍とは違ってそのままトップをキープしての優勝だった。
藍おめでとう! 華恋もおめでとう!

<写真提供/Honda>

最新情報をチェックしよう!