<Moto2> 逆転!最多勝!ランキングトップ! 小椋藍、快心の今季3勝目

実に小椋らしい勝ち方だった。初日のフリー走行を19番手と沈んでハラハラさせたものの、2回のプラクティスを6番手/3番手。Q2にストレート進出すると、3番手を獲得してフロントローに並んでみせた。

「金曜から土曜にかけて、もう一歩いいフィーリングに仕上げることができた。フロントロー3番手はいい位置ですね。このコース(ミサノワールドサーキット)は抜きづらいから、フロントローからスタートできるのは大きいですね」と小椋。

一発のタイムよりもレースタイム、一度の優勝よりもシリーズランキングを重視する小椋にとっては、フリー走行よりもプラクティス、プラクティスよりも予選、予選よりも決勝結果が重要。ポールポジションがいいのはもちろんだけれど、常々2列目までに並べばいい、という小椋にとっては、3番手ならば上出来。ポールポジションからのスタートだったイギリスGPでは決勝2位だったし、優勝したオランダGPは予選2位――小椋にとってはいい兆しだ。

スタートは2番手あたりから。#14アルボリーノはホールショットから逃げる

そのフロントローからのスタートでは、ポールポジションからスタートしたトニ・アルボニーノに続く2番手で1コーナーに進入。アルボリーノがスタートからペースを上げ、小椋とはやや距離ができるものの、いい位置取りでオープニングラップを終えることになる。

アルボリーノを先頭に2番手で周回していた小椋だったが、レース序盤に信じがたい展開が訪れる。アロンソ・ロペスが転倒してしまうのだ。さらにセルジオ・ガルシアは、予選の転倒の影響か、24番手スタートから下位低迷中で、ジョー・ロバーツもジェイク・ディクソンも10番手あたりで集団にもまれている。

これの何が信じがたいかと言うと、この4人、ランキングで小椋を追うライバルたちなのだ。ガルシアはこの時点でランキングトップだし、ロペスとディクソンは、小椋が欠場して痛いノーポイントで終えた前戦アラゴンで2位、3位フィニッシュを果たしている、シーズン後半に入って明確なライバルになるライダーたちが、軒並みミサノのコースを攻めあぐねているのだ。

カネットが前に出ると、それを逃がさないよう、すぐにアルボリーノをパス!

4周目にはアーロン・カネットが2番手に浮上して小椋は3番手へ。マシンが仕上がっていないときの小椋だったら、ここからずるずるとポジションを落とすこともあるけれど、今日の小椋は安心して見ていられた。カネットにパスされた2周後には一旦パスし返し、再び3番手。後ろについている小椋は、カネットの後方で、じっくり走りを観察しているように見えた。

レース中盤にはカネットがトップに浮上し、アルボリーノ、小椋の順でトップ3。ここでカネットが逃げないように、小椋もすぐにアルボリーノをパスし、カネット、小椋、アルボリーノの順。カネットはどう走っても離れない小椋にイライラしていたのかもしれない。ここでいつものように、カネットはインにつけない、立ち上がりで思い切りスロットルを開けられなくなる――ジリジリとカネットの背後に迫る小椋。さぁレース終盤のタイヤ勝負だ。

終盤、ついに#44カネットをパスしてトップに浮上。思い描いていた通りの逆転劇だった

レースはラスト5周。カネットにアタックを仕掛ける小椋。一度パスすると、すぐにぬきかえしてくるカネット。そして次の周に、きちんとカネットを抜き去ってみせた。

ラスト3周、カネット以下を引き離す小椋。カネット、アルボリーノの後方でペースアップをうかがっていたセレスティーノ・ビエッティも転倒で戦線離脱。なにもかも、小椋に追い風が吹いていた。

ラストラップ、小椋に食い下がるカネットを振り切って小椋が優勝! 今シーズン3勝目はMoto2ライダー中の最多勝で、ついにランキングもトップに浮上してみせた。

前戦で負傷した右手の骨折がまだ癒えていないという小椋 それでも勝った!

フィニッシュしてからは、コースサイドにいたMoto2解説でおなじみの上田昇さんから日の丸を受け取ってウィニングラン。この日の丸は、23年のMotoGP日本グランプリでも見かけた、2001年にGP250クラスでワールドチャンピオンとなった故・加藤大治郎さんが使った日の丸そのもの。ここミサノで亡くなった富沢祥也さんのお母様が上田さんに託して小椋の手に渡ったものだった。

「いいペースで前を走れたので、ラスト5周で仕掛けて、タイヤを持たせながら勝つことができた。(前戦で負傷・骨折した)右手がまだ完全に回復していなかったので、金曜はまだ厳しいと思っていたんですが、土曜からはフィーリングもよく走れました。終盤、トップに立ってからは全力で走りました。パーフェクトレース!」(小椋)

2週間後に、所も同じミサノで第14戦が行なわれる その時はきっと、もっと右手は回復しているはず

これで1週のインターバルをはさんで、今回と同じミサノで第14戦がエミリア・ロマーニャと名前を変えて行なわれる。2度目のミサノを終えると、インドネシアをはさんで、いよいよ10月4~6日が日本グランプリだ! 来シーズンからMotoGPクラスを走る小椋。Moto2クラスを走る姿を見られるのはあと7戦だ。

今シーズン3勝目はMoto2ライダー最多勝 上位入賞できなかったイギリス→オーストリア→アラゴンのうっぷんを晴らした
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