KIUSHITANIブランドが全日本モトクロスの舞台へ。ビクトル・アロンソ第3戦SUGO大会を完全勝利

今季よりオフロードウエアを展開しはじめたKUSHITANIは、オートブラザーズ所属のビクトル・アロンソへシーズンを通してサポート。その緒戦となる第3戦SUGO大会は、アロンソの完全勝利だった

チャンピオン不在、群雄割拠のIA2クラスへ

ビクトル・アロンソはこれまでスペインの選手権を中心に戦っていたライダーで、現在19歳。180cmの細身の長身を活かした伸びのあるライディングは、日本人にはなかなか見られないスタイルだ。ヨーロッパ選手権の250クラスに挑戦したこともあり、2022年のフランス大会では最高位14位を獲得している。

このアロンソが2023年の全日本モトクロス選手権をチーム「オートブラザーズ」で戦うことに。アロンソが挑むのは4ストローク250ccの最高峰クラスIA2で、世界的にも類を見ない後方排気エンジンを搭載したヤマハYZ250Fをライド。テクニカルタッチ社がチューニングしたKYBサスペンションや、メイドインジャパンのサクラエキゾーストでカスタムされたスペシャルな仕様のバイクだ。2019年にカワサキの能塚智寛(昨年度IA1ランキング2位)が前述したヨーロッパ選手権250ccクラスに挑んだ際の最高位が17位だったことを考えると、全日本を戦う日本人達にとってとても強力なライバルが急遽出現したことになる。

本人曰く「スペインのモトクロストラックは路面がドライで硬いから、日本のような掘り起こされた路面はあまり走ったことがなくて苦労するよ」と言う。そのせいもあったのか、熊本県HSR九州でおこなわれた開幕戦では、ヒート1で4位、ヒート2はDNF(完走ならず)と本調子ならず。しかし、ヒート3ですべてを巻き返して日本における初優勝を遂げている。続く埼玉県オフロードヴィレッジの第2戦では1−1の完全優勝であった。

手の付けられないスピード

ポイントリーダーとして迎えた第3戦、宮城県のスポーツランドSUGO。折しも台風の接近により金曜まで酷い雨に見舞われた日本列島だったが、SUGOの会場は土曜日早めの時間で雨は降り止んでいた。雨で路面が悪くなることを想定していたため事前にコースの土を掘り起こすことはせず、例年の路面状況とはだいぶ異なっていた。どちらかと言えば、乾いてしまえばアロンソの生まれ育ったスペインの硬い路面によく似ている。レースが進む毎に、硬く締まった黄土色の土にブラックマークが残るような状態に変わっていった。

アロンソは土曜の予選で好スタート。カワサキの西條悠人が先行するレースでオープニングラップを3番手につけるが、2周目にミスで9番手へ転落。わずか7周のレースで2度の転倒を喫し、ペースもそこまで上げることがかなわず、6位まで追い上げてチェッカー。1:58.614とトップの西條とは0.2秒差であった。

予選の結果順にグリッドを選べるため、決勝ヒート1のスタートは若干不利だったものの、オープニングラップで4番手まで浮上してトップ3をロックオン。2周目には若手の阿久根芳仁をパス、4周目に田中淳也をパスして2番手まで上がると、トップの中島漱也とバトルの展開に。勝負が動いたのはレース中盤。アロンソはクラス内で唯一2分を切る1分58秒台の最速ラップを刻みながら、中島を追い詰めてパス。その後はペースを落とさずにリードを拡大、今季4勝目を飾った。

ヒート2、アロンソは西條のホールショットに序盤から食らいついてパス。そのままレースリーダーとして後続を突き放していく展開に。コースの轍は深く刻まれ、深いギャップで高リスクな走行が続く中でもハイペースは変わらず、やはり唯一2分台を切って1分59台のベストラップを記録。最終ラップの16周目では、2位の西條に7秒の差をつけて悠々勝利となった。

アロンソは「他のライダーはとても速く感じたよ。追い上げの展開になってしまったから、すごくタフな一日になった。路面は相当荒れて、轍やブレーキングギャップがかなり深かったんだけど、攻略すること自体に楽しさを覚えたんだ。走っていて面白かった。両ヒートとも優勝することができていい日になったよ。広島のコースは走ったことがないから、次戦も楽しみにしてる」と語る。広島のコースも、同じく硬いハードパックな路面が続きアロンソにとって得意なフィールドになる。次戦にも期待がかかる。

新時代のレディースに挑む

KUSHITANIがサポートする全日本モトクロスライダーはもう1人いる。レディースクラスに参戦する楠本菜月だ。楠本は現在19歳。2017年と2019年に全米アマチュア選手権「ロレッタ・リン」に出場した経験を持ち、当時のガールズクラスでトップを争った。結果は2017年が9位、2019年は5位と惜しくも表彰台には届かなかったものの、そのアグレッシブな走りとスピードは一際目を見張るものがある。

全日本モトクロス選手権では、2022年に自身最高位となる2位を獲得した。今季はマシンをホンダのCRF150RⅡにシフト。チームも新たに、2021年IA1クラスチャンピオン山本鯨氏が監督を務めるTEAM YAMAMOTOに所属し、環境をガラリと変えてレースに挑んでいる。

なお、今季のレディースクラスは2022年チャンピオンの久保まなを含む3人のトップライダーが引退し、トップ争いは若手とベテランの混戦状態となっている。まさに今レディースクラスの新時代が築かれており、楠本もその一角をなす優勝候補の1人だ。

苦しい中でも着実に調子を上げている

開幕戦は2度の転倒から追い上げて6位、第2戦は転倒によりDNFと、今季はなかなか調子が上がらないレースが続いていた。そんな中迎えた第3戦。楠本はスタート後10番手につけ、追い上げる展開となった。なお、今回のコースはミニモトマシンのタイヤが半分ほど埋まるような深い轍がいくつもあり、かなりテクニカルなコンディションとなった。荒れた路面への対応力が求められる中、楠本は安定した走りで前のライダーを交わし、2周目に7番手、3周目に6番手、4周目には5番手と、着実に順位を上げていく。その後も4番手に迫る勢いを見せたが追い上げきれず、結果は5位でフィニッシュ。今大会を振り返った楠本は「SUGO大会を終えて、まだ目標の結果には届いていませんが、レースの内容も良くなってきて少しずつ前に進むことが出来ています。これからのレースに向けて怪我なく調子を上げていけるように頑張ります」とコメント。徐々に調子を上げている楠本の活躍を、次戦も期待していきたい。

最新情報をチェックしよう!