テネレが思い出させてくれた絶景(正直わりかし忘れてた)

みなさんこんにちは、REIです。 REIVLOGのREIBLOG、続きです。

前回の記事はこちら⇒

写真が古すぎてもうローカルで持ってなくて、過去の自分のブログや記事から探してきました。解像度低めで失礼いたします。

高解像写真は心の中にあります。
(タイトルで、忘れかけてたと言ってるけど)

タイトルはテネレなのに、思いきり他ブランド、こちらは大好きなDUCATI Multistrada 1200Sです。
後ろの方にチラッと見える山々、乾燥した大地。

 

みなさんは冬の準備は大丈夫ですか?先日クシタニ世田谷に寄ったところ、冬物がだいぶ少なくなってましたね。種類はまだギリギリ一通りあるけれど、カラーによってはサイズが選べないそうです。お探しの方はお早めに。

僕が写真の中で着用しているのは、生産終了しているK-2635 WINTER RAY JACKETです。これが本当にいいジャケットでした。
ちなみに、今だったらこんなウェアを組み合わせたいですね。
K-2805 WINTER AMENITE JACKET
K-1961 EXPAND CORDURA® WORKPANTS

さてさて、もう写真素材がありません、どうしましょう?

スペイン領カナリア諸島のランサローテ島で開催された新型ムルティストラーダ1200 の世界試乗会に参加してきました。この島は、大半が赤黒い火山岩で覆われつつも、自然保護区として環境保全が徹底された貴重な緑と美しい海に象徴的な白い建物が並ぶ独特なランドスケープを誇る島です。信号機がわずかにしかない牧歌的なリゾート地で、可変バルブタイミング機構を採用した新エンジン搭載のニューモデルを存分にテストできました。

僕は2015年の3月にこんな記事を書いていたようです。

ランサローテとは、こんなところにある島です。

雑に言いますと、火星っぽいところとイメージしてください。

ランサローテ島とは火山の島で、大地はほとんど赤い岩石を覆われていて、緑よりも赤が多いほどです。スペイン領らしく白い建物はスペイン風だとしても、バレンシアオレンジ・オリーブ・葡萄といった彩り豊かな畑で飾られた景色ではなく、ただひたすらに火星です。欧州のハワイ、なんて比喩されるリゾートの島ですが、それはホテルの敷地内だけであり(ビーチや椰子の木っぽい樹木があり、抜群に南国感ありました)、パサパサに乾いてひび割れた島です。

そんな場所でも、わずかに緑はあります。その貴重な緑を切り取ったのが、先ほどの試乗写真二枚というわけです。

 

さてさて、テネレに話を戻しましょう。

テネレが呼び覚ましてくれた思い出とは、そんなカラカラの火星のことでしょうか。いえいえ、それだけじゃないんです。その島に辿り着くまでの空路も含めて、旅全体の行程をも含む、です。

この試乗会の直前まで、僕はイタリアのDUCATI本社におりました。ボローニャではボロネーズソース発祥と謳うレストランをハシゴしたり、ハムとチーズとパンに溺れたり、イタリア人たちから一時間おきにエスプレッソを飲まされたり。もう少し遡ると、フランクフルトかシャルルドゴールかドバイか、どこでトランジットしたか記憶は曖昧ですが、空港で時間潰しがてら食べた味気のないサンドイッチ、バターが強すぎるクロワッサン、そんなパンとコーラだけでも優に10ユーロは超え、さらに遡ると定時的に支給される機内食とクラッカー、食べてばっかりです。

僕にとっての旅とは、思い入れ的に移動手段が大きなウェイトを占めています。列車か、船か、飛行機か。そのいずれかが、バイクと走る景色へ連れて行ってくれるんです。目的地でどんなバイクに乗るかは、そのバイクのローンチイベントで行くわけですからもちろん決まっていますが、目的地に辿り着くまでの道中では何が起こるかは分かりません、ストもあれば大幅なディレイもあれば、ただの移動のようでも立派な冒険なんです。そんな旅路、どこでどうやって何を食べたかなんて案外忘れないもので、EU圏内でも英語が通じずに片言のイタリア語で四苦八苦したり、いい思い出がいっぱいあります。

時差がどれだけあろうとも機内では一睡もせずにもっぱら映画鑑賞を楽しんで時差ボケを現地到着一夜で熟睡して治すというのが僕のコツで、24時間起きていることもザラになるとだいぶ頭が朦朧としてきますが、それでもふとした瞬間に思い出すことがあります。クシタニの店員さんと相談して決めた衣装(ライディングウェア)は現地の天候に対して最適なコーディネートになっているのか、もしも雨が降ったらどうするのか、予想よりも冷え込んだらどうするのか、反対に暑くなりすぎたらどうするのか、シーンに応じてバリエーションを持ち込めるような試乗コースとサポート体制なのか、そんなことを現地ホテルに到着するギリギリまで考えています。

 

バイクは準備のスポーツです。土壇場になって気合だけでなんとかするのも最高に楽しいですし、実際に予測とズレた衣装だけで試乗に挑むことになると気合でしか解決できませんが、狙い通りに、準備通りの完璧な装備で走る時の気持ち良さは至極の贅沢です。

知らない土地で、異国語の標識に戸惑いながら、右側通行を間違えないようにしながら、ラウンドアバウト(環状交差点)でいくつ目の出口から右左折すればいいのか迷いながら、そもそもアスファルトがグリップするのかどうかたまに自信を失いつつ、つまり気を張っていたいことなんていくらでもあるんです。

そんな時に、ウェアが「重い、きつい、緩い、暑い、寒い、蒸れる、染みる」なんて考えていたくないわけです。時には36時間以上かけて飛行機を乗り継ぎさらに乗り継ぎ、ようやく訪れるような場所で、僕が安心して走るには、ベストな装備が必要なんです。

それが僕がクシタニに求めるものです。

何を着ているか意識せず、例え手に入れて開封したばかりの新品だとしても、昔から着ていたお気に入りの一着のように体に馴染んで、ただ走ることに集中させてくれるウェア。

そうして初めて見える景色があるんです。

360度を地平線で囲まれ、空と海が繋がり、自分の呼吸音や心拍が聞こえた瞬間、視点が眼球から俯瞰にシフトします。

スロットルをひねる右手のグローブを木漏れ日が撫でて、前輪が弾いた小石がブーツの爪先をかすめて、ヘルメットからわずかにはみ出した顎先と襟足が風を捉えて、無心になる瞬間。

 

はい、そんなわけで、雰囲気出しました。想像力豊かなあなたはついてきてくれました。ありがとうございます。
ランナーズハイ、ゾーン、北斗神拳、鬼滅の刃では全集中の呼吸、色んな言い方ありますが、夢中な時間ってありますよね。夢中になってバイクと向き合って、一切の雑念とは距離を置いて、自分とバイクしか存在しない絶対領域や聖域のような対話の時間、これが気持ち良いですよね。ハイになれれば、ランサローテ島か近所の小道かどうかなんて、大した問題ではありません。海外の空港のパンより、セブンイレブンのパンの方が遥かに美味しいです。

結論、テネレが思い出させてくれた絶景とは、夢中になることである。

 

夢中製造機は、僕の場合はテネレでしたが、みなさんの愛車もきっと夢中空間を発生させてくれる機械だと思います。こんな昨今で遠出しにくい、かもしれませんが、無理に遠出しなくたっていいのでは。ちょっとそこまでなんて距離感でも、ヘルメットのシールドを下ろした瞬間に日常を旅にしてくれる、そんな相性の合うバイクと出会えたあなたは幸せです。

他に所有するYZF-R1はサーキットで走らせれば、150km/hから先の速度域では微塵も猜疑心なんてなくて、完全に一体化して夢中にしてくれます。F3 800はスピード問わず全く夢中にしてくれない代わりに、いまエンジンに乗っかってるなー、排気音がうるさいなー、ここ直したいなーと、バイクの都合で振り回してくれて楽しませてくれます。そこら辺の話はまたいずれ。

 

またお会いしましょう。
以上、REIがお送りしました。

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