前回、コーヒーの味わいはその土地の気候風土が決めるとお伝えしました。これでは、ほぼ自然が相手で人が携わる事ができないのでは・・・と、思われた方もいると思いますが、農家の方がコーヒー職人として本領を発揮するのは、収穫から処理の仕方です。
今回は、収穫から処理のお話をしていきます。
まず、収穫で一番大事な事は“タイミング”です。コーヒーの産地は、雨季と乾季の二季のところが多く乾季の後半につぼみをつけたコーヒーの木は、雨季の始まりと同時に一斉に開花します。(この時は、あたり一面甘い香りが漂うそうです)やがて、青い実がついて熟してくると赤く色付いてきます。(品種により黄色くなる品種がありますが、黄色の実が特別に良いとかではなく、あくまで品種が違うだけです)
コーヒーの甘さを決めるのは、この熟度!完熟した実だけを収穫する事が、とても大切で大変な作業なのです。

また、一つの農園で色々な品種のコーヒーを育てている為、品種により収穫時期が違います。今、どこの畑が熟度のピークを迎えていて収穫に一番良いのかを、見極めなければなりません。こうして、収穫したコーヒーの赤い実はできるだけ早く処理する事が求められます。
処理の方法は、大きく分けて3種類。
収穫した赤い実を“パティオ”と呼ばれるコンクリートの広場に広げて干す方法です。
(最近は、アフリカンベッドと呼ばれる金網の棚に干すこともあります)
この方法は、赤い果肉の部分から水分が抜けて行く時に熟成される独特な香りが特徴のコーヒーが出来ます。広げて干すだけの単純な方法ですが、しっかりとした管理ができないと、水分が多い果肉の部分の腐敗が起こり異臭が出たり、雑味のあるコーヒーが出来てしまいます。


水分が最も多い果肉の部分を取り除き(パルピング)干す方法です。果肉を取り除いただけなので、その下にある“ムシラージ”と呼ばれる粘液質が着いたまま干すので、ムシラージの水分が抜けて行く間にやはり個性的な風味が作られます。。
この方法は、大量の水を使うので水利が悪いところでは出来ないのと、最近、廃棄する汚水の問題も出てきています。

このようにコーヒーの味わいはコーヒーが育った気候風土、環境、収穫、処理で決まってきます。この味わいを焙煎や抽出で変える事は出来ません。
さて、次はコーヒーの品質を見極める『カッピング』についてお話しして行きます。
羽田圭伸(はねだ けいしん)
静岡県浜松市のスペシャルティコーヒー豆専門店「コーヒー屋ポンポン」のマスター。自身もバイク乗りで、店名のポンポンは遠州地方の言葉でバイクの意。クシタニ カフェのコーヒーの監修とコーヒー豆の供給を行う。ジャパン・バリスタ選手権審査員、カップ・オブ・エクセレンス国際審査員。店内にはオリジナルブレンドで人気の「カフェ・ポンポン」をはじめ、「カフェ・ガードナー」「カフェ・クロスビー」「カフェ・ロッシ」などライダーに所縁ある名の商品も並ぶ。