「コーヒーの香りを鼻腔にぶつける」できますか?|クシタニカフェの豆を焙煎している職人談~4話~

「コーヒーの品質を見極める能力」=「カッピングスキル」が必要

コーヒーの味わいは、産地で決まると書いて来ましたが・・・
では、日本にいるコーヒー屋は何もできないのか!?と、言うとそうでもないのです。
日本にいるコーヒー屋に必要なのは「コーヒーの品質を見極める能力」です。
カッコ良く言うと「カッピングスキル」が必要ということです。
コーヒーの品質を見極めるには「カッピング」が出来なければなりません。
「カッピング」とは、ワインでいうところのテースティングと同じです。
コーヒーの世界では、ワインの世界と方法が違う為にカッピングと呼んでいます。
カッピングする人達を“カッパー”と呼びます(頭にお皿をのせた妖怪と違います)。
ただ、カッピングの評価が確立されたのはそんなに古くはなく今から20年ほど前、
ブラジルで初めて行われたカップ オブ エクセレンスの頃からです。
では、それまでは何をしていたかと言うと・・・生産国で、輸出担当の方がその豆が
輸出して良いか否か、おかしな匂いがしないかを見る程度でした。
しかし、1980年代ぐらいからコーヒー離れが始まりコーヒー価格の下落が起こり
生産者が困窮する事態になりました。これを機にコーヒーの味について見直しが図られ
コーヒーの味わいの評価表が作られ、品質を数字化して分かりやすくなりました。それが、カッピングです。では、どのように行われるか、簡単にお話しして行きます。

ドライ
まず、粉の状態となった豆の香りをみる「ドライ」
カッピングには、色々と評価方法がありますが、ここでは最も厳しいとされるカップ オブ エクセレンスの基準でお話しします。評価表もカップ オブ エクセレンスの審査員が使うものです。
カッパーは、評価する豆の生産国だけは知らされますが、その他の情報は知らされません。(生産地のエリアや処理方法、品種、等々を知ると予断が入り正確な評価ができなくなります)
この為カッパーは、評価する豆と初めて対峙するときは既に焙煎され粉の状態になっています。
まず、粉の香りをみます。(ドライ)
次に、粉に直接お湯を入れて4分待ちます。この間に立ち上がってくる香りをみます(クラスト)
4分経ってカッピングスプーン(カッピング専用のスプーンがあります)でゆっくり底まで入れて4回かき混ぜます。この時かき混ぜながら香りを見ます(ブレイク)
その後、泡が残るのでこの泡は取り除きます。カッピングの準備が完了です!
ドライ、クラスト、ブレイクと香りを見ますが、この香りの評価点数はつけません。どんな香りがしたかコメント欄に書き込むぐらいです。
クラストお湯を入れて立ち上がってくる香りを見る「クラスト」
スプーンカッピング専用のスプーン
カッピング
コーヒーを口の中で噴霧状にして香りを鼻腔にぶつける「カッピング」
では、カッピングスタート!
スプーンに3分の2ぐらいコーヒーをすくい強く吸い上げます!ピュー!
強く吸うのは、コーヒーを口の中で噴霧状にして香りを鼻腔にぶつけるからです。(慣れないとむせるので注意が必要です。良い子はあまり真似しないでね)
そして、すぐに吐き出します。長い間口にふくんでおくのはNGです。なので、吐き出し用のカップを常に持っています。
品質には、いくつかのみる項目があるのでそれを説明して行きます。
初めに、コーヒーの品質で最も大切なのがコーヒーの透明感、クリーンカップ。これは、液体の色が透明と言う事ではありません。口に含んだ時の液体の透明感です。
次に、甘さ、スイートネス。ずばりそのコーヒーが甘いか?どんな甘さか?例えば、シロップのようにさらりと甘いのか?黒糖のようにやや厚みのある甘さなのか・・・等々。
次は、酸味、アシディティ。文字通り酸味ですが、強さではありません!あくまでも酸味の品質をみます。奥行きがあるか?立体感があるか?などなど。
次は、さらにわかりにくい液体の質感、マウスフィール。日本語だと表現が難しいですが、良いものは滑らかさや厚みがあったり、悪いものはざらつきがあったりします。
次は、風味、フレーバー。これは単純に香りではなく味わいと香りがリンクしている事です。例えば、酸味の味わいに柑橘系の香りがするのはわかりますが、酸味の味わいにナッツの香りがするのはしっくり来ません。
次に、後味、アフターテースト。品質が良いものは甘みを伴いスーッと消えます。長い時もありますが、消えます。悪いものは、いつまで経っても残っています。
次に、均等性、バランス。突出した味わいが少なく一つのコーヒーとしてまとまっているかをみます。バランスが悪いと何か違和感を感じます。
最後に、総合評価、オーバーオール。これは、カッパーが個人的な嗜好で評価する項目です。
スコアシート
細かく評価を記入するスコアシート。

このようにして、100点満点で評価します。
82点以上あれば良いコーヒーだと思います。
あくまで、人の評価なのでばらつきはありますが、良いコーヒーは多くの人が良く評価します。
カッピングは、実際やってみないと分かりづらいので文章では、もっと分かりづらいと思います。しかも、きちんと習熟するには数年かかると思われます。でも、このカッピングが正確に出来るかがコーヒー屋としての最も大事な事なのです。なぜなら、この評価ができないと品質の良いコーヒーを買い付けることが出来ないからです。

コーヒー屋ポンポン


羽田圭伸(はねだ けいしん)
静岡県浜松市のスペシャルティコーヒー豆専門店「コーヒー屋ポンポン」のマスター。自身もバイク乗りで、店名のポンポンは遠州地方の言葉でバイクの意。クシタニ カフェのコーヒーの監修とコーヒー豆の供給を行う。ジャパン・バリスタ選手権審査員、カップ・オブ・エクセレンス国際審査員。店内にはオリジナルブレンドで人気の「カフェ・ポンポン」をはじめ、「カフェ・ガードナー」「カフェ・クロスビー」「カフェ・ロッシ」などライダーに所縁ある名の商品も並ぶ。

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