オフテクをマナボウ「オフロードを始める第一歩 芯を捉えるポジションニング」|KUSHITANI OFFROAD METHOD

“オフテクをマナボウ”では、全日本モトクロス選手権IA1クラスで5度チャンピオンを獲得し、世界選手権にも出場した経験を持つ、山本鯨氏を講師として、オフロードバイクのライディングテクニックを学んでいく。

#1 オフロードを始める第一歩 芯を捉えるポジションニング

今回のテーマは「芯を捉えるポジショニング」。オフロードバイクは舗装されてない路面を走るため、よく「バランス感覚が必要だ」という話を聞くことがあるが、山本氏によると、この「バランス感覚」=「芯を捉えてバイクに乗れるか乗れないか」ということらしい。芯とは一体何なのか?

「芯」を理解する

芯とは?

芯とは、タイヤが地面に接触している接地部分のこと。走っている時のタイヤの接地面積はテレホンカードやクレジットカード1枚あるかないかぐらいの大きさで、そこに芯が凝縮されているという。例えば、バイクがまっすぐ立ってる状態では、地面に向かって垂直に軸があるが、コーナリング時などバイクが傾けば軸も斜めになる。芯は路面や傾きによって大きく変化するものなのだ。

コース状況によって「芯」は次々に変化する

芯のイメージは掴めたものの、実際にバイクの芯を意識して走るというのは簡単なことではない。特にオフロードコースの路面は凸凹しており、数センチずれただけでも路面の状況は大きく変化する。その変化に合わせて芯を意識、捉えていくことが、オフロード走行のコツというわけだ。

しかし、そもそもオフロードバイクに乗ったことがない人にとっては、車高の高いオフロードバイクに跨ることが不安だったり、どんなふうに乗れば良いかわからないという方も多いはず。そこで今回は、芯を捉えるための第一歩として、ライディング前の乗車動作とポジションの決定という基礎的な部分をおさらいしていく。

スムーズにシートを跨ぐための4つのポイント

オフロードを走るためには、衝撃を吸収するためにサスペンションのストローク量を増やす必要があるため、オフロードバイクの車高は必然的に高くなる。山本の身長は173cmほどだが、バイクと並ぶとシートが腰と同じぐらいの高さにあり、車高の高さが見てわかる。また、オンロードバイクと比べてもその差は一目瞭然だろう。

オフロードバイクに跨る動作を見ると、一見何気なく跨っているように思えるが、車高が高い分足を高く上げる必要があるため、バランスを崩しやすく、特に初心者にとっては不安に思う点でもある。しかし、その跨がる動作にもコツがあり、それを意識することで安全に、スムーズに乗ることができる。ポイントは4つ。

①バイクの真横に立つ

シートを跨ぐ時にバイクから離れた位置にいると、傾けたバイクを押さえながら跨がらないといけなくなるため乗りづらく、バイクを支えきれず倒れてしまう危険もある。バイクの近くに立ってから跨がることで、バランスを崩さず乗ることができる。

②ハンドルを切る

ハンドルを切ることでバイクに安定感が生まれる。

③右足の位置に左足を持っていく

跨る時は、バイクの真横に立った際に右足を置いていた位置に左足を置くことで、マシンとの距離が近いまま跨ることができ、バランスを保ちやすい。なお、身体の向きは斜めに向けたハンドルと平行にすることでより安定感が増す。

④車体を自分側に傾ける

バイクを自分の方に傾けず、垂直のままの状態で跨ろうとすると、乗車方向にバイクを押してしまい、反対側に倒れてしまう危険がある。バイクを自分の方に傾けて乗ることで転倒のリスクを避ける。

芯を捉えるためのポジショニング

バイクに跨った時の位置、つまりポジショニングは、芯を捉えて走るためにとても大切。バイクのどこに、どんなふうに乗るか。重要なのは、肩周りや足など「全身の力が自然と抜ける位置」であるという。このポジションを決めるためのポイントは3つ。

下半身でバイクの“面”を捉える

両足のブーツの内側からユニフォームの内側、股にかけて、下半身の内側全体で、バイクを面で捉えるようにすることが力を抜くためのポイント。特に路面が凸凹しているオフロードにおいては、面で捉えることでマシンとの一体感が増し、落車のリスクも抑えられる。

ステップに置く足の位置

ステップに置く足の位置もポジショニングにおいて重要となる。オフロードコースは地形がバラエティーに富んでいて、非常に段差が多いため、ステップの足の位置は路面から受ける衝撃を上手くこなしていくために意識して身につけておきたい。

足の位置としては、つま先と土踏まずの間くらいの位置で乗るのがちょうど良いだろう。バランスを崩して落車する心配もなく、しっかりと荷重をかけられるポジションである。なお、山本自身は足首をさらに柔軟に、第2のサスペンションとして使うために、土踏まず寄りの位置ではなく、つま先をステップに乗せているという。

目線

オフロードバイクは車高が高いため、乗車時の目線も高くなる。意識としては真下や路面を見るのではなく、遠くを見ることが重要。自然とまっすぐ座った状態でまっすぐ見た時の目線の位置が、自然なポジションとなる。無理に遠くを見ようと思って顎を上げたり、顎を引いて下から上目遣いで見たりすると、胸部など身体に力が入ってしまうためおすすめしない。初めに言った「自然に力の抜けるポジション」を意識することが大切となる。

なお、「自然に力の抜けるポジション」にいることで、マシンとコミュニケーションが取りやすくなり、バイクの芯を意識することができるという。ポジショニングはライディングにおける一番の基礎。まずオフロードに楽しく乗りたいという人は、ポジショニングを理解した上でバイクに乗ることで、楽しさが倍増するだろう。 

 

次回予告 第2回 最初にしたい!オフロードのマシンセッティング

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