オフテクをマナボウ「ブレーキングで大切な荷重コントロール」|KUSHITANI OFFROAD METHOD

“オフテクをマナボウ”では、全日本モトクロス選手権IA1クラスで5度チャンピオンを獲得し、世界選手権にも出場した経験を持つ山本鯨氏を講師として、オフロードバイクのライディングテクニックを学んでいく。

#4 ブレーキングで大切な荷重コントロール

第3回では「アクセルコントロール」をテーマに、アクセルの開け方や、その繊細な感覚を学んだ。加速するためのアクセルコントロールを学んだ上で、今回は減速するためのブレーキングについて学んでいこう。

Picture of 山本 鯨(Yamamoto Kei)

山本 鯨(Yamamoto Kei)

1994年オートバイレース活動をスタート。2010年18歳でスズキとプロ契約をし2013年よりホンダへ移籍、その後イタリアに拠点を移し世界選手権へ参戦。メキシコ大会総合Top10入り、全日本モトクロス選手権では7度のチャンピオンを獲得した。2022年よりJapan Motocross Academyを設立。モータースポーツを愛する方へ向けた、イベントや体験を提供している。

ブレーキレバーの操作方法

アクセルを開ける時は5本の指を使ってグリップを握っているが、ブレーキをかけるには当然ながらグリップから指を離して操作する必要がある。ただし、アクセルにかけている指を全て使ってレバーを操作するのかというとそうではない。レバーに掛ける本数はライダーによってそれぞれだが、一般的に人差し指または中指1本でブレーキをかけるライダーが多く、実際に山本は中指1本でブレーキを操作しているという。

中指1本でブレーキを操作する理由は、グリップをしっかりと握るため。路面が荒れているオフロードコースでは、グリップをしっかりとホールドしておかないと走行時の衝撃で指が外れてしまったり、うまく握れずアクセルを開ける時に力が入らない可能性がある。これではアクセルとブレーキを上手く操作することができず、結果マシンをコントロールすることができなくなってしまう。そのため、人差し指と親指は写真のようにくっつけてグリップをホールドし、小指と薬指、手のひらはグリップにしっかりとくっつけて握ることで、荒れた路面でも丁寧な操作が可能となる。

ブレーキング時に意識すべき、車体の傾きと路面状況

オンロードとオフロードではタイヤのグリップ力が全く異なる。例えば、全力でスピードを出したところから急ブレーキをかける時、土の上はグリップ力が低いため、すぐに止まるということが想像以上に難しく、スピードが出ている時ほどブレーキング時は滑りやすく、バランスが崩れやすくなる。そこで安全かつ安定したブレーキングを行うには、車体がまっすぐになっていることが重要となる。

例えば、ハンドルが左右どちらかに向いている状態でフロントブレーキをかけると、ハンドルは向いている方向にさらに切り込もうとする。また、車体が傾いた状態でブレーキをかける場合、倒れている方向と逆側にタイヤは滑っていく。このように、マシンが傾いた状態でブレーキをかけると、タイヤが滑ってバランスを崩しやすくなるため、車体がまっすぐになっている状態でブレーキをかける、ということを意識してほしい。

また、ブレーキをかけるときの路面状況の確認も大切だ。オフロードコースの路面はブレーキをするにはバランスを崩しやすい。例えば、モトクロスコースは路面が凸凹していたり、石が転がっている。さらに、山の地形を生かしたエンデューロコースでは、木の根っこが斜めに走っていることがあり、ブレーキングのタイミングを間違えると転倒に繋がってしまう。特に木の根っこは滑りやすく、木の根っこを通るタイミングでフロントブレーキをかけるのは危険。そのため、木の根っこを通り過ぎてからブレーキをかける、または手前でアクセルを戻し、ブレーキをかけなくて良いスピードで走行するなど、路面状況を見極めながらブレーキングのタイミングをコントロールすることが重要だ。

ブレーキング時の荷重コントロール

ブレーキのかけ方とかける時に意識すべきことを学んだ上で、1つステップアップした荷重コントロールについても学んでおきたい。

オフロードを走る時には、マシンの上に立つ「スタンディング」という動作をする場面が多い。スタンディングをする理由としては、路面からの衝撃を受けにくくするなど様々な意味があるが、そのうちの1つが荷重移動のしやすさだ。座っている状態でも荷重の移動はできるが、スタンディングの方が少しの体重移動で荷重をコントロールすることができる。

荷重移動がなぜ大切かというと、マシンのバランスを保つためである。ブレーキをかけた時、マシンの荷重は前、つまりフロントタイヤに多くかかる。しかし、フロントタイヤが地面に接地している面積は、荷重が80%かかっていても100%かかっていても変わることはない。つまり空き容量がないところにものを詰め込んでキャパオーバーするのと同じで、フロントタイヤに負担が集中してしまう。フロントに荷重がかかりすぎると、コントロールがしづらくなったり、バランスを崩してしまうため、スタンディングで後ろに荷重をかけることで、マシンの荷重をバランスよく保つことが大切だ。理想としては、フロントとリヤの荷重を常に50:50にしておきたい。

なお、リヤブレーキを使用することで、リヤタイヤにも荷重がかかり、フロントにかかる荷重を軽減することができる。実践する時には、リヤタイヤが地面にグリップする「トラクション」を感じながらフロントブレーキもかける、ということを意識してみると、よりマシンのバランスを感じやすくなるだろう。

 

次回予告 第5回 いつスタンディングするの?

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