世界を舞台に戦うライダーを支える、クシタニのレーシングスーツとレーシングサービス

クシタニは2019年、ロードレース世界選手権(MotoGP™)に参戦するライダーへのサポートをスタートしました。サポートするのはMoto2™クラスに参戦するIDEMITSU Honda Team Asiaのソムキャット・チャントラ選手、ディマス・エッキー・プラタマ選手、そしてMoto3™クラスに参戦するHonda Team Asiaの鳥羽海渡選手、小椋藍選手という4名のライダー。MotoGP™の現場でレーシングサービスを行うのは、クシタニとして初めてのことです。

「現場には1戦ごとにレーシングサービスに来ており、ライダーの転倒によって損傷したレーシングスーツの修理を行っています。こちらに来たときには、前戦で転倒したレーシングスーツがあり、現場で修理を行います。袖などのパーツごと交換が必要なくらいに傷がひどいものは日本に持ち帰って修理を行い、再び現場に持ってくるというのがサイクルですね」

「各ライダーに十分な数のレーシングスーツを提供しており、修理で持ち帰っても現場には使用できるレーシングスーツが各レース開始時には4~5着用意されています」

そう話すのは、クシタニのレーシングサービスを担当する企画生産管理部の皆川知彦さん。MotoGP™の現場で、レースやセッション中の転倒などにより修理が必要になったレーシングスーツの対応などを行っています。

「水曜日の午後にサーキットに入り、木曜日に修理が必要なレーシングスーツを受け取ってサポートを行います。決勝レースで転倒すると、時間がないので日本に持って帰ることが多いです」

クシタニがMoto2™クラス、Moto3™クラスのライダーたちに提供するのは、『ARISE SUIT(NEXUS Ⅱ)』という市販のレーシングスーツがベースとなっています。市販の『ARISE SUIT(NEXUS Ⅱ)』と大きく違う点は、エアバッグ。MotoGP™では全ライダーが着用するレーシングスーツに対し、エアバッグシステムを装備することが義務付けられているため、世界選手権ライダーに提供するレーシングスーツにはダイネーゼのエアバッグシステム、D-air®が搭載されています。ただ、基本的な造りとしては、市販のものとほぼ同じレーシングスーツです。

そんなクシタニのレーシングスーツに対し、チャントラ選手やプラタマ選手、鳥羽選手、小椋選手からはどのようはフィードバックが寄せられているのでしょうか。

「ここまで完成しているスーツなので、ライダーからの要望はほとんどありません。むしろ、こちらが転倒のダメージなどを見て、補強の方法などを考えています」

一方、「筋トレをしている選手もいますから、腕まわりがきつくなったりして、サイズ修正をすることもあります。それは革を少し足して幅を広げるなど、修理で対応しています。詰める分には現場でもできますからね」と、成長を続けるライダーならではのエピソードを明かしてくれました。

そんな皆川さんにレーシングサービスでどんなときにやりがいを感じるのかを聞くと、「きれいにレーシングスーツを直せたとき」という職人らしい返答。「ライダーがそのままいい成績を収めてくれれば、それはうれしいです。一番は、転倒をしないでほしい、ということですけどね。もちろん、活躍していただければうれしいですよ」

ちなみに、こちらが皆川さんが修理したレーシングスーツ。右腕部分の傷がきれいに直っています。

MotoGP™は世界最高峰の二輪ロードレースです。MotoGP™クラスはもちろんのこと、Moto2™クラス、Moto3™クラスのライダーたちは毎戦、激しい戦いを繰り広げ、しのぎを削っています。皆川さんに、そんなMotoGP™の印象を聞きました。

「勝つための努力が、どんどんシビアになっていると思います。コンマ1秒でもタイムを短縮できるならば、労力を惜しまずにやっていく。それはライダーだけではなく、メカニックでも同じです。そういう意味では、レーシングスーツに対し、メカニックから来る要望もあります。ストレートで伏せたときのために、胸から背中の厚みを少しでも薄くできないか、とかね。(ストレートで風の抵抗を抑えるために)肩の部分ができるだけ小さくならないか、とか」

「もちろんある程度は考えますが、プロテクターなどもあるので限界はあります。ただ、ストレートスピードも稼げるところは稼ぎたい、ということなのでしょう。世界選手権は意識が高いですね。アジア・タレントカップでトップのライダーが、CEVに参戦すると真ん中くらいのポジション。CEVでトップのライダーが、世界選手権で真ん中くらいになるんです。それだけ差がある、世界中からトップのライダーが来て、戦っているということだと思います」

「その中で、『クシタニのレーシングスーツは着やすくて安全性が高い』と言ってもらえるように、これからも開発を含め、やっていかないといけないと思っています」

コンマ1秒でもライバルよりも速く走るため、トップライダーたちが厳しい戦いを繰り広げるMotoGP™の世界。クシタニは、そんなライダーたちが高いレベルで安全に戦い続けられるように、レーシングスーツという側面から支え続けています。

クシタニ 企画生産管理部 皆川知彦さん

MotoGP™の現場でレーシングサービスを担当するほか、CEVでクシタニがサポートするライダーへのレーシングサービスも担う。また、開発などの仕事にも携わっている。

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