200 個以上のパーツを丁寧に縫い合わせていく
裁断された革は、縫製の前にエッジをすいて薄くしていく。これは何枚もの革が重なった時の厚さを軽減するため。また装飾用の革は1.5mmから1mmほどの厚さにして軽量化。表面の段差をなくせば、転倒時の路面の引っ掛かりを軽減できるからだ。そしてこれは同時に、仕上げの美しさにも繋がる。
そして革と革、革とザイロンといった感じで次々とパーツが縫製されていく。「縫製」と言っても、パーツをただ繋げていくわけではない。パーツ同士で縫い合わせる辺の長さが違ったり、素材同士の曲率の異なる面同士を合わせなければいけない難しさがある。でも、だからこそ平面だったパーツが、どんどん立体的に膨らんでいく。
例えば、腕の部分はライダーがバイクに跨ってフォームを取った形になる。 縫製を見ていると、まるで革に息吹が吹き込まれていくような気がしてくる。これだけでライディングフォームの取りやすさが想像できる。
また、表面は平滑さと強度が重要だが、着心地を左右する裏側も硬くならないように、分厚くならないように工夫する。


レーシングスーツの製作は、ベテランの職人でも24時間を要する。1日/8時間作業しても3日はかかる。裁断もそうだが、縫製も人の手に委ねられている部分がとても多い。しかも、オーダーは人それぞれで、色もサイズもオプションも異なる。だから量産が難しく、それなりに納期がかかる。
完成したレーシングスーツを見ると少し不思議なことに気が付く。それは糸の色である。基本的にクシタニのレーシングスーツは革と糸が同色。ということはオーダーの仕様によって、縫製する順番が変わるのである。ミシンの糸を変更するのは時間がかかる作業とのこと。だから、同じ色の糸の部分をまとめて作業する。経験値が作業効率を大きく左右するのがよくわか る 。美しく確実なものをつくるだけでなく、どうしたら早く縫えるかも職人技の一つだ。



クシタニの職人は、作業しながら、その製品がどのような形になり、どのように使われるかを常に想像し、ハンドメイドで形にしていく。だから、クシタニのレザー製品は、機械任せでは生まれない温もりに溢れている。
「クシタニの魅力はなんですか?」と聞かれると、僕は「素材です。触ってみてください」と答えることが多い。 そして、その人の好みを探りながらスペックや機能を羅列してみる。バイクのスペックが好きな方は、ウェアのスペックも好きだからだ。 […]
「クシタニの魅力はなんですか?」 とクシタニ契約のプロライダーに聞くと、多くのライダーが「怪我をしないことです」と答える。1人、2人でなく何人ものプロライダーがそう答える。 僕らのような普通のライダーはバイクラ[…]
実際に革を裁断するシーンを見ると、驚くほどスピーディで大胆。様々な形や大きさの物を、リズミカルかつ正確に切り取っていく。集中力、技術力、判断力、そこには職人の色 々な「力」が宿る。 しかし、ミスは許されない。レザースーツのパーツは 2[…]