“オフテクをマナボウ”では、全日本モトクロス選手権IA1クラスで5度チャンピオンを獲得し、世界選手権にも出場した経験を持つ山本鯨氏を講師に迎え、オフロードバイクのライディングテクニックを学んでいく。
これまで全12回に渡って、乗車姿勢をはじめ、スタンディングやライン取り、ジャンプの飛び方といったオフロードバイクに乗るためのテクニックを学んできた。そして今回が“オフテクをマナボウ”シーズン1の最終回となる。今回はこれまでの学びをコースで実践するにあたり、把握しておくべきコースの特徴や、走るにはどんな準備が必要なのかを解説していく。
オフロードコースの特徴
オフロードコースとは、モトクロスやエンデューロといったオフロードバイク競技やファンライドを行うための場所を指す。整地されたモトクロスコースや、自然環境を生かしたエンデューロコースなど、競技の種類によってコースレイアウトやセクション、走行ルールが異なり、それぞれのコースを走破する楽しさを味わうことができる。コースは全国各地にあるため、まずは家の近くのコースがどこにあるのかを探してみると良いだろう。
今回”オフテクをマナボウ”の撮影を行ったコースは、埼玉県川越市にあるオフロードヴィレッジだ。全日本モトクロス選手権の会場にもなる場所で、初心者向けから上級者向けのコース、ジャンプセクションのないフラットトラックなど、ライダーのレベルに合わせたコースがいくつも用意されている。
モトクロスコースはジャンプがあって怖そう、と感じる人もいるかもしれないが、整地され、走行ルールも決まっているため安全性は十分に確保されている。さらに走行時間も車種やライダーのレベルに合わせて初級・中級・上級と区分されている場所が多いため、自分に合ったクラスで走ることで安心して楽しむことができる。
コース走行時の装備
オフロードコースを走行するにあたり、装備の着用は必須である。ここではどんな装備があるのかを紹介していく。
まずはオフロードブーツ。オフロードコース走行時には、転倒時や転倒しそうになって足をついてしまった時に自分の体重のみならずバイクの重さも加わり、怪我をする危険性がある。足にかかる負担や衝撃が大きいため、足や足首を守るためのプロテクションが備わっているオフロードブーツは欠かせない。ただし、モトクロスとエンデューロでは競技内容が異なり、ソールやブーツ自体の柔らかさなど必要な特徴も変わってくる。各競技に合わせたブーツがあるため、自分の用途やライディングにあったブーツを選択することをおすすめする。
オフロードコースを走る時の服装として、オフロードウエアがある。オフロード走行時はバイクにただ乗っているのではなく、荒れた路面でバイクを乗りこなすために座ったり立ったりと身体は常に動いている。そのため、ウエアはライディング中の動きやすさを重要視して作られており、薄くて伸縮性が高いのが特徴だ。クシタニが手がけるオフロードウエアは、伸縮性のある素材も採用しつつ、膝部分とお尻、股といった、ウエアがマシンとこすれて摩耗しやすい部分に牛革を採用しているため、動きやすさと耐久性の高さが魅力である。ウエアに悩んでいるライダーはぜひチェックしてみてほしい。
なお、ウエアは動きやすさや通気性を重視しているため薄く、ウエアそのものにプロテクション性能はない。そのため、飛石や転倒時の怪我を防ぐためにウエアの中または外にプロテクターを装着することが義務付けられている。首はネックブレース、胸部はチェストプロテクター、肘はエルボープロテクター、膝はニーシンガードやニーブレースといった防具があるため、ウエアと合わせて揃えておこう。
グローブも重要な装備の1つ。手はアクセル・ブレーキ・クラッチの繊細な操作を行う部分になるため、操作性を重視して作られている。公道走行用のグローブと比べてはかなり薄手に感じるだろう。また、クシタニが発売しているムーブオフロードグローブは、操作性を確保しつつ手の甲など必要な部分にプロテクションを配置し、操作性とプロテクションを両立しているため、初心者にもおすすめだ。
オフロード走行時には、オフロード用のヘルメットが必要となる。オンロード走行用とは異なり、オフロードヘルメットはバイザーが長く、前のライダーから飛んでくる土や石、泥などが顔に付着するのを防ぐことができる。また、ゴーグルも同じく、前からの飛石や泥が目を傷つけて視界が奪われないようにするアイテムだ。オフロード競技用に視界の広さや通気性を追求して作られており、その特徴はメーカーやブランドごとに異なってくる。ヘルメットとゴーグルはデザインも豊富なため、自分のサイズや好みに合わせて選ぶと良いだろう。
走行前に見ておきたいマシンセッティング
ミラーやウインカー、ヘッドライトなどの保安部品がついている場合はコース走行中に傷がつく恐れがあるため、外すかビニールテープなどを巻いて保護しておくことをおすすめする。特に自走でコースへ向かうことを考えている人は、保安部品が壊れると帰ることができないため、注意しておこう。
モトクロス走行時の空気圧は0.6〜0.85kg程度。公道を走る際は1.5kgくらいが標準のため、低いと感じる人が多いだろう。しかし、オフロードコースは路面が荒れているため、タイヤが路面を捉えて前に進むためには、タイヤの空気圧を下げてたわませる必要がある。滑らず、グリップが効く丁度良い数値を探して設定しよう。
なお、マシンセッティングに関しては第2回でも詳しく解説しているため、こちらもチェックしてほしい。
https://www.kushitani.co.jp/logs/offtech02/
オフロードバイクの魅力
最後に山本が感じるオフロードの魅力、”オフテクをマナボウ”を通じて伝えたいことを聞いた。
「オフロードを続けていく上で一番大事な要素だと思うのは、無理して怪我をしないこと。そして小さな成長を楽しむことです。何か目標や課題を持っていないと小さな成長が身に染みないので、今日はこういう課題を持ってこの練習をしようという風に練習の質を高めていくことで、小さな成長体験を積み重ねていってほしいです。たとえば、タイヤ1個分飛ぶってすごいことなんです。それを1.5個分、2個分と(飛距離を)伸ばしていって、小さな喜びを感じることがオフロードを続けていく秘訣だと思います。30年近く、競技を続けて、引退した今もなお楽しんで乗っているので、”オフテクをマナボウ”を通じて読者の皆さんにもその楽しさを共有できていたら嬉しいです(山本)
KUSHITANI OFF TECH BACK NUMBER
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