ライテクをマナボウ〈サーキットで遊ぼう!〉「サーキットでリヤブレーキの役割って何?」|KUSHITANI RIDING METHOD SEASON 3 Vol.20

公道のライディングでもリヤブレーキを使った方が良いと聞くけれど、サーキットでもフロントブレーキだけで十分に減速できるから、正直なところあまり使っていません……。サーキット走行でリヤブレーキを使うメリットってなに?

#20 サーキットでリヤブレーキの役割って何?

リヤブレーキを使うのは、曲がりやすくするため??

いまどきのスポーツバイクのフロントブレーキは極めて強力なので、サーキットで200km/hオーバーの高速からでも、フロントだけで十分に減速できる。それに公道のような信号や一時停止はないから、リヤブレーキのメリットを感じにくい気がするが……。

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小川勤|TSUTOMU OGAWA

バイク専門誌に25年ほど携わり、10年ほど編集長を経験。その間、国内外の様々なバイクに試乗。2022年よりフリーランスのジャーナリストに(身長165cm)。

リヤブレーキって、使わないとダメですか?

サーキット走行でリヤブレーキを使っていないライダーは意外と多いようだが、僕(小川)はすべてのコーナーで使っている。もちろん減速のためでもあるが、リヤブレーキを使う主目的はバイクの「車体姿勢」を作るためだ。

じつはバイクには曲がりやすい姿勢がある。ところがコーナー前の減速でフロントブレーキしか使わないと、車体が前のめりになる。そして前のめりの姿勢だとバイクは曲がりにくいのだ。

フロントブレーキだけだと、車体が過剰に前のめりになって曲がりにくい。

ストレートではアクセルを開けているので後輪側に荷重がかかっているが、コーナーに近づいてアクセルを戻すと荷重が前輪側に移動する。その状態でフロントブレーキをかけると、さらに荷重がフロントに集中するため、前のめりの曲がりにくい車体姿勢になってしまう。

反対に曲がりやすい車体姿勢とは、全体的に車体が低く沈んでいる状態だ。車体が高い姿勢(加減速していない走行状態)よりも車体が低い方が、バンクする時の移動距離が少ないので、素早く曲がり始めることができるからだ。

コーナーの前で低い車体姿勢を作っておけば、素早くバンクして向き変えできる。

低い車体姿勢を作るには?

そこで、素早くバンクして曲がりやすい低い車体姿勢を作るのに有効なのが「リヤブレーキ」だ。バイクの構造的にリヤブレーキをかけると車体のリヤ周りが下る(路面方向に沈む)のだ。

この特性を利用して、コーナー手前のブレーキングではリヤブレーキをホンの少しだけ先にかけ始める。するとリヤ周りが沈むので、すかさずフロントブレーキをかければ、リヤが下った状態でフロント周りが下るので、結果として車体全体が低い姿勢になるワケだ。

先にリヤブレーキをかけてリヤ周りを下げた状態で、フロントブレーキをかければ車体全体を低い姿勢にできる。

また、リヤブレーキをかけておけばリヤサスペンションが伸びる動きを抑えてくれる。フロントブレーキだけだとフロントフォークが縮んでリヤサスペンションが伸びるので前下がりの姿勢になってしまうが、リヤブレーキをかければそんな状態も抑制できるのだ。

リヤブレーキを上手くコントロールするコツは?

リヤブレーキのメリットは理解できても「操作が難しいから……」と使うのを躊躇しているライダーも少なくないようだ。

たしかに手と違って足は繊細な操作が苦手なのも事実。そこでリヤブレーキ操作のコツだが、まずはキチンと軸(支点)を作ることが大切。ステップバーを軸にして、ツマ先を円運動で動かしてブレーキペダル踏んでみよう。

リヤブレーキはステップバーをキチンと軸にして、つま先を円運動で動かしてブレーキペダルを踏むのが基本。

とはいえ、ついブレーキペダルを踏むツマ先にばかり意識が集中すると、カカトが浮き気味になって軸(支点)が曖昧になってコントロール性が損なわれるので要注意!

カカトが浮き気味になって軸が曖昧になると、強弱をコントロールできない。

そこで円運動に慣れるまでは、ステップバーとブレーキペダルの両方とも踏むのがオススメ。こうすることで土踏まずとステップバーが密着してしっかりと軸(支点)になり、リヤブレーキの強弱のコントロールを簡単に行うことができる。そして慣れてきたら、徐々に円運動に変えて行けばOKだ。

ステップバーとブレーキペダルの両方を踏むと、ステップバーがしっかりと軸(支点)になる。

リヤブレーキ操作に自信が付けば、コーナー進入時の車体姿勢作りも色々と試せるようになるので、積極的に使えるように練習してみよう!

バイクトリビア

バンク中にブレーキをかけても大丈夫なABSがある

2018年以降に販売された125cc以上のバイクにはABS(アンチロック・ブレーキ・システム)の装備が義務付けられている。ABSは急制動時にタイヤがロックしないための安全装置というイメージだが、最新スーパースポーツ系が装備する「コーナリングABS」や「レースABS」と呼ばれるモノは、スポーツ走行に必須のアイテムに進化している。

BMWのS1000RRは「ABSプロ」および「インテグラルABS」を装備。

これらの最新ABSは、バイクの車体姿勢を検出するIMU(慣性計測装置)と連動して、コーナリングのバンク中でも最適な前後ブレーキの配分と効きの強さを制御してライダーをサポート。そのため、昔のバイクのようにリヤブレーキがロックしたり後輪を振り出す危険がなく、積極的に使うことができる。

最新のドゥカティのパニガーレV4Sは「レースeCBS:ABS」を装備。

またドゥカティのパニガーレV4S(2025年モデル)が装備する「レースeCBS:ABS」は前後ブレーキが連動するのはもちろん、コーナーに進入してブレーキを離した後も、自動的にリヤブレーキを効かせ続けて車体を安定させるなど、プロライダーが狙い通りの走行ラインを走るためのテクニックを再現してくれる。

このような最新ABSは、作動していることをライダーに気付かせずに極めて自然に介入して走りをサポートしてくれるのも大きなメリットだ。

次回予告 第21回  やっぱり膝を擦りたい!

KUSHITANI RIDING METHOD BACK NUMBER

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