ライテクをマナボウ「腰をずらすときは お尻を浮かせない」|KUSHITANI RIDING METHOD SEASON 2

ツーリングで訪れた峠路。飛ばすワケじゃないけれど、コーナリングで腰をずらしてみた。カッコ良いしスポーツしている気分に浸れるから楽しいんだけれど、ずらさずに乗っている時よりも、なんとなく不安定な感じが……。ずらし方、間違えてるのかな?

#7 腰をずらすときは お尻を浮かせない

カッコ良いから腰をずらして曲がりたい!

レースの映像などを見ていると、カーブでライダーが大きく腰をずらしてコーナリングしていて、とてもカッコ良い! そこで、せっかくスポーツバイクに乗っているのなら……と自分も腰をずらしてみたら、頑張って攻めてる気分にはなるけれど、なんとなく不安定な感じ。普通に走るなら、腰はずらさないほうが良いのだろうか?

Picture of 小川勤|TSUTOMU OGAWA
小川勤|TSUTOMU OGAWA

バイク専門誌に25年ほど携わり、10年ほど編集長を経験。その間、国内外の様々なバイクに試乗。2022年よりフリーランスのジャーナリストに(身長165cm)。

腰をずらすとスポーツ気分満点! なんだけど……

レースの場合は「可能な限り速く走る」という明確な目的があり、腰をずらしてコーナリングするのも、速く走るためのアプローチのひとつ。それなら、一般道を走るスピードならずらすのは無意味かというと、そういうワケでもない(ライテクをマナボウ シーズン1「#21 腰をズラす意味 知っている?」に詳しいので、ご参考に)。

もちろん「カッコ良いから」という理由だけで腰をずらすのも、趣味でバイクに乗っているのだからまったく問題ない。……が、ずらしたことでコーナリングの安定感を損なったり、不安に感じるようなら本末転倒なので、そこはキチンと解決しよう。

どうやって腰をずらしている?

よく目にするのが「ステップに立ってお尻を浮かせて座り直す」パターンだ。もちろんヒザが真っ直ぐ伸びるほど高く立ち上がるワケではないが、少なからずお尻をシートから浮かせて、カーブの方向(左カーブなら左側)に動いてからシートに座り直しているのではないだろうか?

じつはこの「カーブに入る直前にシートからお尻を浮かせる」とういう動作が、バイクの曲がる仕組み(セルフステア)や安定感などに悪影響を及ぼしている。少し専門的に言うと「後輪から荷重が抜ける」ためだ。

ステップの上に立って座り直す

両足でステップの上に立ち、お尻を浮かせた状態で横方向(写真は左カーブを想定しているので左側)に動いてからシートに座る。これが安定感を損なう主たる原因だ。

ちなみにカーブの手前では、曲がるために減速(ブレーキング)するが、その時ステップの上に立ってしまったら「下半身ホールド」することができない(「♯06 下半身ホールドとニーグリップって 違うんですか?」も参考に)。前に飛び出そうとする身体を腕でハンドルを突っ張って支えることになるから、やはりセルフステアを邪魔するし、イヤな前のめりで不安にもなるだろう。

ステップに立ったら下半身ホールドできない!

カーブに入る前のブレーキング中にステップに立ってお尻が浮いたら、下半身ホールドできず身体を支えられない。

お尻を浮かさずに腰をずらす方法は?

それではお尻を浮かさないで、どうやって腰の位置を変えるのか? それにはステップを前方向に蹴り出すイメージで足裏に力を入れて、お尻をシートの上で滑らせて動けばいい。とにかくお尻が浮かないように意識して、シートの表皮とパンツがズルっとグリップしながらもスムーズにずらせるように、停めたバイクに跨って練習してみよう。サイドスタンドで停めている場合は、不意に前後に動かないようにギヤを1速に入れ(エンジンはストップ)、車体が左に傾いているので左カーブを想定して試すのがオススメだ。

ステップは立たずに「蹴り出す」

写真は右側(右カーブ)に腰をずらす場合。左足のブーツのカカトでステップバーを前方向に蹴り出すイメージで足裏に力を入れると、反対にお尻が後ろ側に押されるので、シートの上を右斜め後ろに向かってお尻を滑らせる。

そしてお尻をシートから浮かさずに斜め後ろにずれる動作に慣れたら、後ろに下がり切ったところでスッと身体の力を抜いて、イン側(左カーブ想定なら車体の左側)に上体を沈めよう。

腰を横方向にずらそうとすると、どうしてもステップの上に立つ形になりやすい。そこでお尻が弧を描くように「後ろに滑らせてイン側に下がる」動きを意識すると、お尻がシートから浮かず、後輪の荷重が抜けずに腰をずらすことができる。いわゆる「前乗り」になるのも防げ、下半身ホールドを維持できるのもメリットだ。

真横にずれずに弧を描く

写真は左側(左カーブ)に腰をずらす場合。右足でステップを蹴り出して、お尻をシートの左斜め後ろまで押し出したら、身体の力を抜いて車体の左側の低い位置に下がる。

ところで腰はいつずらす?

ありがちでよく目にするのが、カーブに進入して車体をバンクさせる直前、いわゆる「向き変え」のタイミングでエイッとずらすパターンだが、これはNG。「向き変え」は重心をスッとイン側に移動して車体を傾ける大切な瞬間なのに、いくらお尻が浮かないように気を付けても少なからず車体に力が加わるので、不安定になったり曲り方が弱くなったりしてしまうからだ。

なので、腰をずらすタイミングはカーブの手前で「ブレーキングを始める前」が得策。アウト側の太ももやひざの下半身ホールドを使えば、ブレーキングで身体が前に行こうとするのも抑えられるし(減速Gに耐えられる)、向き変えの瞬間に車体に余計な力が加わることもない。

連続カーブは真っ直ぐ座っているヒマがない!?

腰はカーブ手前のブレーキングの前にずらして準備。というコトは、カーブが連続する場合は右から左へ、左から右へと、つねに先を読んでズラす方向を変えていく。

というワケで、腰をずらしたコーナリングを楽しむには●ステップに立たずに●弧を描くように●早く準備して●キチンと下半身ホールド。意識するポイントは多いけれど、不安なくカッコ良く走るために、お忘れなく!

バイクトリビア

ステップポジションの選び方

アフターパーツのステップキットを見ると、近年は「可変ポジション」の製品が多く、体格や乗り方に合わせて様々なポジションを選べるメリットがある。とはいえ、セット位置が後ろ過ぎるライダーが多いようにも感じる。

ステップポジションを決めるのに大切なのは、腰をずらしたり着座位置を変える時などに、ステップに力が入り過ぎない位置を選ぶこと。その際にステップ位置が後ろ過ぎると、前方向に蹴り出すのが困難で、力が入り過ぎてお尻が浮いてしまうことがある。

昔は「バックステップ」と呼ばれたコトもあり、なんとなく後ろの方がスポーツ向きなイメージもあるが、標準の位置からあまり大きく変えずに、力を入れずに自然に動ける位置を探してみよう。

 

次回予告 第8回 タイヤに空気入っていますか?

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