ライテクをマナボウ ♯30 曲がるきっかけ どうやって作る?|KUSHITANI RIDING METHOD

コーナリングの組み立てを意識したり、ブラインドカーブも出口が見えてから曲がり始めることで、俄然ワインディングが楽しくなってきた……のは良いんだけれど、どうも狙った場所からきちんと曲がり始めるのが上手くいかない。これ、ビシッとタイミングを合わせるコツってあるんですか?

曲ると決めた場所で、きちんと曲がり始めたい!

カーブはグルーンと一発で曲がろうとせずに「ブレーキング→向きを変える→旋回→立ち上がり」と各パートを切り分けて考えて走ると、気持ち良く安全に曲がれる(「♯20 コーナリングの意思改革をしよう」で詳細に解説)。

先の見えないブラインドカーブも、なんとなく「そろそろ曲がらなきゃ……」ではなく、出口が見えてから曲がり始める方が確実。それは理解できるのだけど……。

Picture of 小川勤|TSUTOMU OGAWA
小川勤|TSUTOMU OGAWA

バイク専門誌に25年ほど携わり、10年ほど編集長を経験。その間、国内外の様々なバイクに試乗。2022年よりフリーランスのジャーナリストに(身長165cm)。

曲がりたい場所と、実際に曲がるタイミングが上手く合わない……(汗)

じつは「ここで曲がりたい」という向きを変えるポイントに、きちんと合わせて曲がり始めるのがけっこう難しい。タイミングが遅れて大回りしそうになって焦ったり、反対に少し早く曲がり始めてしまってイン側のセンターラインを割りそうになったり……。

せっかくコーナリングの組み立てを考えても、向きを変えるポイントでタイミングよく曲がり始めないと、その後の旋回に上手く繋がらなかったり、予定していたラインから外れてしまったりする。スピードを十分に落としていれば、曲がり切れないほど危険というワケではないけれど、どうにも楽しくない。

この、狙った場所にきちんとタイミングを合わせる「曲がるきっかけ」は、どうやれば作れるのだろうか?

ブレーキを使って曲がる!?

バイクに乗り始めてキャリアの短いライダーでも、ブレーキをかけている間は車体が真っ直ぐに起きて安定感が強いのを、経験的に体感しているだろう。逆に言えば、ブレーキをかけていると車体が起きて安定するということは、ブレーキを離すと安定性が無くなる。バイクの構造が生み出す現象だが、これを曲がるきっかけ作りに利用するのだ。

まず、カーブに入る前にブレーキを使ってしっかりスピードを落とすが、その後も軽くブレーキをかけた状態で進み、自分が決めた向きを変えるポイントまできたら、ブレーキを離す(リリースする)のだ。するとその瞬間に直立しようとする力が消えて、車体がスッと傾いて曲がり始める。

もちろん、身体の力を抜いて重心移動することで曲がるのが基本だが(♯19 バイクの動きを邪魔せず 力を抜いて曲がる)、ブレーキ&リリースを使うことで、曲がり初めのタイミングを狙った場所にシッカリ合わせられるのだ。

まずは減速のためのブレーキと、曲がるためのブレーキを明確に使い分けるように意識してみよう。慣れてくると「減速→曲がるため」と連続したブレーキ操作ができるようになるだろう。

ブレーキリリースを使って、狙った場所から曲がり始める

カーブを確実に曲がれるスピードに調整するためのブレーキ。最初に強くかけて、徐々に緩めながらコントロールするのが理想。まずはこのブレーキでしっかりとスピードを落としておく。リヤブレーキも使おう。

曲がるポイント(向きを変えるポイント)を探すためにかけているブレーキ。事前に減速のためのブレーキでスピードが落ちているので、強くかける必要はない。車体が寝ずに起きていようとするくらい、そっと軽くかけていれば十分だ。

「ここで曲がろう」と決めたポイントに来たら、スッとブレーキを離す(リリース)。すると直立していようとした力が無くなって、スッと傾く。車体の向きが変わり、狙った場所から曲がることができる。

曲がるポイントを探す間、ゆっくりとブレーキをかけている

日本のワインディングに多いブラインドカーブは、とくにこの「ブレーキリリースで曲がる」テクニックが有効だ。『♯27 先の見えないブラインドカーブ どこから曲がる』でも解説しているが、早めにイン側についてダラダラと曲がり始めるのではなく、カーブの出口や曲がり具合が把握できる場所まで「曲がるポイントを探しながら走る」ことが大切。

そして曲がるポイントを探している間は「曲がるためのブレーキ」をかけて、いつでも瞬時に向きを変えられるように準備をしておくのだ。

もちろんサーキットのようにコーナーの曲率を把握していたり、先が見通せるカーブの場合も、ブレーキリリースを使うことで走りの精度がグッと高くなるので、ぜひ身につけたいテクニックだ。

重心移動の準備をしながら曲がるポイントを探す

曲がるための軽いブレーキをかけた状態で、力を抜いて重心移動する準備をしながら、向きを変えるポイントに向かっていく。

狙ったポイントでブレーキを離し、イン側に体重を預ける

向きを変えるポイントまで来たら、ブレーキを離しながら身体の力を抜いてイン側に体重を預ける。力を抜くタイミングが少し早くても、ブレーキを離すまでは曲がり始めないので問題ない。逆に言えば、力を抜くタイミングが遅れないように気を付けよう。

 

リヤブレーキも同じように使う

狙った場所で正確に曲がり始めるために、リヤブレーキもフロントと同じように使おう。減速時は最初に強く効かせ、徐々に緩めながらコントロールして、向きを変えるポイントに来たらスッと離す。ブレーキリリースのタイミングは基本的にフロントと同時でOKだ。

そして操作に慣れてきたら、リヤブレーキだけ少し後まで残すなど、リリースのタイミングを変えてみるのもアリだ。またフロントブレーキもスッと素早く離したり、スゥ~ッとゆっくり離すなどリリースの仕方を変えると、曲がりやすさや曲がる強さの変化に気づく。まずは曲がるきっかけを作ってしっかりタイミング合わせるのが大切だが、その先はイロイロ試すことで、もっと奥深くライディングを楽しめるだろう。

次回予告 ♯31 あ!曲がりきれない! その時どうする?

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