いまどきのバイクのフロントブレーキは超強力! だからリヤブレーキなんて使わなくても、充分に減速したり止まることができる。それに大きな声では言えないけれど、じつはリヤブレーキを上手く使う自信がない……。それでもリヤブレーキは使った方が良いんですか?
リヤブレーキを使った方が、絶対におトク!
近年の強力なフロントブレーキは、むしろ効きすぎて困るくらい良く効くので、リヤブレーキの必要性を感じない。また近年のバイクはABSが装着されているため後輪がロックすることはほとんどない(ABSが介入することはある)が、少し前のバイクだとリヤブレーキは後輪がロックしやすいイメージを持つライダーもいるだろう。
実際に昔のバイクの中には、後輪がロックしやすい車種があったのも事実。だから、なんとなくリヤブレーキに苦手意識があり、かつフロントブレーキだけで減速・停止できるので「リヤブレーキは使わない」というライダーは少なくない。でも、本当に必要無いのだろうか?
小川勤|TSUTOMU OGAWA
バイク専門誌に25年ほど携わり、10年ほど編集長を経験。その間、国内外の様々なバイクに試乗。2022年よりフリーランスのジャーナリストに(身長165cm)。
じつはいまどきのスポーツバイクのリヤブレーキは、減速したり止まるためというより、バイクの「姿勢」をコントロールするために装備されている、といって良いだろう。とくにスーパースポーツ系のバイクほど、その傾向が強い。
減速や停止する時にフロントブレーキをかけると、バイクの姿勢が前下がり(前のめり)になる。これに不安に感じ、強くブレーキをかけられずエンジンブレーキに頼るライダーもいるはず。しかし、リヤブレーキを使うと、バイクの構造として車体の後部が路面側に沈む作用があるため、フロントフォークが大きく沈んだ前下がり(前のめり)の姿勢にならないというメリットがある。
リヤブレーキを使うことで、減速時に前下がり(前のめり)の不安がなくなるのは嬉しい。その不安がなくなった分、きちんとフロントブレーキをかけられるようになるので、結果として強いブレーキングができるようになる(制動距離も短くなる)。また、少し専門的なところではカーブを上手く曲がるための車体姿勢を作るのにもリヤブレーキが必須なのだ。
ちなみに最近のバイクはABS(または前後連動ブレーキ)の装備が義務化されているため、おおむね250クラス以上のバイクなら、リヤブレーキで後輪がロックする心配はまず無い。最新のコーナリングABSやレースABSが装備されていれば、カーブで車体がバンクしている最中でも大丈夫なので、積極的にリヤブレーキを使ってみよう。
リヤブレーキを使わないと前下がりになって不安定
どちらも40km/hからブレーキをかけて、停止する寸前のフロントフォークがもっとも縮んだ状態を撮影したところ。よく見るとリヤブレーキを使っている方(右側)が、わずかだが後輪とテールカウルの隙間が狭く、フロントだけでなく車体の後部も沈んでいるのがわかる。速度が低いので大きな差は無いが、リヤブレーキを使う方が制動距離も短い。
「支点」を作ればリヤブレーキは簡単!
「リヤブレーキを使った方が良い」といわれても、上手くコントロールする自信がないと躊躇してしまう。足で操作するため、手のように繊細にコントロールできず、苦手意識を持つこともあるだろう。
そんな上手くできない最大の原因は、きちんと「支点」が作れていないこと。たとえばクルマのブレーキも、床に着けたカカトが支点になっているので踏む強さをコントロールできるが、床からカカトを浮かせたら、どうにも上手く踏むことができないはず(危険なので試さない方が良いが)。
ステップにしっかりと足裏(土踏まず)を載せて、そこを支点(軸)にして円運動でペダルを踏むのが基本。それは多くのライダーがわかっているし、実践しているつもりだが、それでもうまくコントロールできないのは、ツマ先でブレーキペダルを踏んだ反力で、ステップから足裏が浮き気味になって、支点が無くなっているからだ。
そこでオススメしたいのが、ブレーキペダルと一緒にステップも踏み込む方法。これだと足裏が浮かないのできちんと支点ができる。さらにステップにカカトを載せて、ブレーキペダルと一緒に踏む方法も試してみよう。この「ステップも一緒に踏む」を続けていると、自然とリヤブレーキ操作に慣れて行き、気が付くときちんと円運動になっているパターンも多い。
もうひとつ、リヤブレーキを上手くかけるコツとして、事前にブレーキペダルの遊びをキャンセルしてから踏み込むことが大切。これは『♯09 クラッチ&ブレーキレバーのストロークを知る』で解説したフロントブレーキのレバー操作と同じで、ペダルの遊びごと一気に踏み込んでしまうと、ブレーキが効き始めるタイミングがわかりにくかったり、丁寧に操作しているつもりなのに急にガクッと効いてしまうからだ。
それとリヤブレーキをかけるタイミングは、フロントブレーキと同時か、フロントよりわずかに早くかけ始めよう。リヤブレーキはバイクの構造的に車体の後部を沈める作用があるとはいえ、フロントブレーキだけかけてフロントフォークが大きく沈んだ前下がり(前のめり)の姿勢になった後にリヤブレーキをかけても効果を望めないし、ともすればABS非装備のバイクだと後輪がロックする危険もあるからだ。
支点を作って円運動で踏むのが理想的だが……
ステップに載せた土踏まずの部分を支点(軸)にして、ブレーキペダルの遊びが無くなるところまであらかじめ軽く踏んでおき(遊びをキャンセル)、そこから円運動で踏み込むのが理想。……ただし、慣れないと足裏がステップから浮きやすいのが難点。
ステップから土踏まずが浮くとコントロール性が落ちる
円運動しているつもりでも、ツマ先ばかりに力を入れてブレーキペダルを踏み下げると、反力で足裏がステップから浮き気味になる。すると支点が無くなってしまうため、ブレーキペダルを踏む力のコントロールが困難になる。
ステップも一緒に踏み込むと、きちんと支点ができる
足裏全体でステップとブレーキペダルを一緒に踏み込んでみよう。こうするとステップから足裏が浮くことなく、支点を作った状態でブレーキペダルが踏めるので、力の強さをコントロールしやすい。
ステップにカカトを載せるのもオススメ!
ステップにカカトを載せた状態で、ステップとブレーキペダルを一緒に踏み込む。ブレーキペダルをツマ先では無く足指の付け根で踏むので、確実に入力できる。足が小さい女性にもおススメだ。
様々なシーンで使えるリヤブレーキ
「リヤブレーキで車体の姿勢をコントロール」と聞くと、難しく感じるかもしれないが、単純にフロントブレーキを使いにくいシーンで活用できる、と考えればお得感があるだろう。
たとえば狭い路地などを低速で走行している時は、フロントブレーキだとギクシャクしがちだが、そんな時はリヤブレーキで速度調整すれば良いし、渋滞した道路での減速にも便利だ。
またダート(未舗装路)でフロントブレーキをかけるとハンドルを取られて転倒する危険もあるが、そんな場合もリヤブレーキで減速。オンロードスポーツ車で道路工事など予期せずに未舗装路に遭遇した時には、絶対にリヤブレーキを使った方が安全だ。
他にもタンデム走行時に、減速するたびに「ヘルメットがゴツン」を経験した方もいると思うが、スロットルを戻したりフロントブレーキをかける前にリヤブレーキをかけると、パッセンジャーの身体の揺れを抑えることができ、お互い快適になる。
このようにリヤブレーキは様々なシーンで活用できるので、不安なく使えるように上手な踏み方をマスターしよう!
次回予告 ♯11 実はニュートラルの簡単な出し方がある
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皆さんこんにちは、こんばんは! YouTubeと連動するクシタニ・ライディング・メソッドの『シーズン2』が始まります。この連載では街乗りやツーリングなど様々なバイクシーンを楽しく過ごすための様々な「ライディングの気づき」をお伝えしていきます! #1
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ライテクをマナボウ ♯32 アウト‐イン‐アウトは危険!|KUSHITANI RIDING METHOD
スポーティにコーナリングするなら「アウト‐イン‐アウト」の走行ラインが有効だと昔から言われている。もっとも効率が良く、カーブを最速で駆け抜けられるテクニックとして有名だけど、ワインディングでも何かメリットがあるのかな……? 速そうでカッコ良いアウト‐
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とくに先が見えないブラインドカーブは、曲がり具合をしっかり予測……したハズだけど、いざ曲り始めたら思った以上に回り込んでいて、ドキッ!とすることもしばしば。なんとかやり過ごしてはいるけれど、きちんと回避できないと本当にヤバイかも……。 思ったより曲が
ライテクをマナボウ ♯30 曲がるきっかけ どうやって作る?|KUSHITANI RIDING METHOD
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ライテクをマナボウ ♯29 なぜ 右カーブは難しく感じるの?|KUSHITANI RIDING METHOD
よくわからないけど右カーブの方が左カーブより難しく感じる。なんとなくライディングフォームが決まらなかったり、ゆっくり走っていても微妙に不安だったりする。コレって自分だけ? たまたま右カーブが苦手なだけ? 他のライダーはどうなんだろう? じつは左より右
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正直なところ、下りカーブが苦手……というか怖い。勝手にスピードが出てしまうから曲がり切れるか不安になるし、前のめりになったり腕が突っ張ったりして、はっきり言ってちっとも楽しくない! 上りはけっこう気持ち良く走れるのに、どうしてこんなに違うんだろう?
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ライテクをマナボウ ♯26 回り込んだヘアピンカーブ どうやって走る?|KUSHITANI RIDING METHOD
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ベテランから「遠くを見ろ」とか「バイクは見た方に進む」とか言われる。なんとなく意味は解るので、自分としてもやっているつもり……なんだけど、気が付いたら前輪のスグ前を見ていたりする。路面の荒れとか、気にし過ぎているのかな……。 「遠くを見ろ」とは言うけ
ライテクをマナボウ ♯23 路地からの発進&左折小回り|KUSHITANI RIDING METHOD
教習所でも厳しく(?)指導される「左折小回り」。とはいえ極低速だとバランスをとるのが難しいし、アクセルを開けると安定する代わりにどんどん大回りに……。もちろん曲がり切れないワケでは無いけれど、いつもなんとなくギクシャクしているのがスッキリしない……。
ライテクをマナボウ ♯22 絶対に転ばないUターン|KUSHITANI RIDING METHOD
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ライテクをマナボウ ♯21 腰をズラす意味 知っている?|KUSHITANI RIDING METHOD
レース映像を見るとコーナーで大きく腰をズラしているし、ツーリングで行った峠路でも腰をズラしているライダーを見かける。カッコ良いな……と憧れる気持ちと、なんかヤル気満々でちょっと恥ずかしいかもって感じもするけど、そもそもなんで腰をズラすの? ズラすとカ
ライテクをマナボウ ♯20 コーナリングの意識改革をしよう!|KUSHITANI RIDING METHOD
ライディングに慣れてくると、カーブを気持ちよく曲がる方法が気になってくる。ベテランライダーの走りを見ていると、まるでコンパスで円を描くようにグルーンと一発で曲がっているように感じる。マネしてみるけど、スムーズじゃないし……気持ち良く曲がれないのはなぜ
ライテクをマナボウ ♯19 バイクの動きを邪魔せず 力を抜いて曲がる|KUSHITANI RIDING METHOD
バイクはハンドルを切るのではなく「車体を傾けて曲がる乗り物」というのは、当然わかっている。それに「余計な力を入れるな」とも言われる。だけど、そもそも力を入れなければ車体を傾けられないんじゃないの? この矛盾、どうしたモノか……。 バイクの傾け方に良し
ライテクをマナボウ ♯18 バイクはどうやって曲がっている? 軽く傾けるコツがある?|KUSHITANI RIDING METHOD
バイクが自然に曲がろうとする動きを邪魔しちゃいけないといわれるし、なんとなく意味もわかる……気がする。でも、バイクは車体を傾けないと曲がらないわけで、何を意識して傾けるのが良いんだろう? 上手な傾け方ってあるんですか? 「セルフステア」をおさらい ラ
ライテクをマナボウ ♯17 回転数とギヤの選び方 バイクは低回転が美味しい!|KUSHITANI RIDING METHOD
いまどきのバイクのエンジンは、高回転まですごい勢いで回転が上がる。たくさん回した方がスポーティに走っている満足感もある……のだけど、実際はとんでもないほどスピードが出ちゃって内心ドキドキ。本当のところ、どれぐらいの回転数で走るのが良いんだろう? エン
ライテクをマナボウ ♯16 ショックのないシフトダウン|KUSHITANI RIDING METHOD
シフトダウンする時のショックは、不快というだけでなく「不安」。信号で止まる減速時はともかく、峠路のカーブの手前のシフトダウンでギュッと強いエンジンブレーキが効こうものなら、ドキッとして曲がり始めるタイミングまで見失ってしまう。このショック、なんとかし
ライテクをマナボウ ♯15 ショックのないシフトアップ|KUSHITANI RIDING METHOD
いったんスタートしてしまえば、その後シフトアップしていくのに、それほど難しさを感じることはない……のだけれど、シフトアップするたびに車体が前後にガクンと揺れるのはナゼだろう? こんなショック、無い方が快適なのに……。 丁寧に操作してもショックが消えな
ライテクをマナボウ ♯14 停止線で毎回同じように停まれてる?|KUSHITANI RIDING METHOD
街中の信号や一時停止、とくに問題なく停まれている……というか、停まれなかったら大変だ。だけど「毎回同じように停まれているか?」と聞かれると、ちょっと自信がないかも。停止線のけっこう手前で停まってしまい、足を着いてチョコチョコ前進することも無くはない。
ライテクをマナボウ ♯13 ギクシャクしないスムーズな発進|KUSHITANI RIDING METHOD
免許を取って乗っているワケだから、当然ながら普通に発進できる……けれど、じつは内心「エンストするんじゃないか」と、発進のたびにドキドキしているのは内緒。アクセルもクラッチも慎重に操作しているのに、この得も言われぬ不安感、何とかなりませんか? 足の着き