ライテクをマナボウ ♯09 クラッチ&ブレーキレバーのストロークを知る|KUSHITANI RIDING METHOD

レバーを握ればブレーキがき、レバーを離せばクラッチが繋がる。この操作をすれば走ったり止まることはできるけれど、どうも上手く操っている気がしない……。思い通りに止まったり、スムーズに発進するには「レバーのストロークの役目」を把握するのが先決だ!

ブレーキは「遊びのキャンセル」が大切

これまでも、小指から巻き込むようにグリップを握ったり(♯06 グリップの握り方)、ブレーキやクラッチが操作しやすくなるレバー位置の調整方法などを解説してきた(♯08 レバー位置の調整)。ここでもう一歩踏み込んで、レバーを引いていく中での「ストローク位置の役目」を知っておこう。これだけで「思い通りのコントロール」にぐっと近づくからだ。

Picture of 小川勤|TSUTOMU OGAWA
小川勤|TSUTOMU OGAWA

バイク専門誌に25年ほど携わり、10年ほど編集長を経験。その間、国内外の様々なバイクに試乗。2022年よりフリーランスのジャーナリストに(身長165cm)。

まずはブレーキレバーから。多くのライダーが、レバーを引いても最初は軽く動いてブレーキが利かず、さらに引き込んでいくと利き始める……というのを、なんとなく経験的に感じているはず。ところが実際にブレーキをかけるシーンでは、思ったのと違ってなかなか利き始めなかったり、そ~っと丁寧にかけているつもりなのに急にギュッと利いてドキッとすることがある。これはブレーキレバーのストロークに対する役目が、実際の操作で曖昧になっているパターンが多いためだ。そこで「なんとなく……」ではなく、しっかりとストロークの役目を把握しよう。

そしてブレーキ操作で大切なのが「遊びのキャンセル」だ。遊びのストロークごと一気にブレーキをかけるのではなく、事前に軽くレバーを引いて遊びの部分(1)を無くしておいて、減速したい場所に来たらブレーキが利き始めるところ(2)まで素早く引き込み、レバーが硬く感じるところ(3。タッチの部分)からジワッと引き込んでブレーキの強さを調整する。

このストローク位置にきちんと合った操作ができると、急にガクッとブレーキが利くことが無くなり、ブレーキをジワッと弱める(リリース)のも上手くコントロールできるようになる。

1.レバーの遊び
バイクの「レバーの遊び」とは?遊びって何のこと?を解説します!

力を入れなくてもレバーがカタカタと動く「遊び」の部分。ここはまったくブレーキが利かない。

2.ブレーキが利き始める
ブレーキがきき始めるのは、遊びが終わってから

遊びが終わったところから、まだスッと軽い力でレバーを引ける部分。わずかにブレーキが利きはじめるが、実際に減速するほど強く利かない。

3.利きの強さをコントロール
ブレーキレバーの「タッチ」とは?バイク用語を解説します

レバーが硬くなり(ここを「タッチ」と呼ぶ)、実際にブレーキが利いて減速が始まる。ここからのレバーの引き込み量で、ブレーキの強弱を調整する。

バイクを押してストロークを確かめる

ブレーキレバーの遊びとブレーキがきくまでの仕組みを徹底解説

愛車のブレーキレバーのストローク位置を正しく把握するには、バイクを押して検証するのが簡単だ。

平坦な場所でバイクをゆっくり押し進めながら、まずはレバーの遊び(1)が無くなるまでごく軽くレバーを引いて見よう。それでも同じようにバイクを押し続けられるはずだ。

そこからレバーにわずかに抵抗が出るところまで引くと、少しブレーキをスルスルと引きずる感触があるが、それでもまだ車体を押し続けられる。ここがブレーキが利き始めるストローク(2)だ。

そしてレバーが硬くなるところまで引くと、ブレーキが利いてピタッと止まり、頑張って押してもまったく動かなくなる。ここからが実際の走行時にブレーキが利いて、強さをコントロールする領域(3)だ。

この方法で試すと、車種にもよるが1の遊びのストロークが意外と長く、2のブレーキが利き始めるストロークがかなり短いことが理解できる。

 

半クラッチのストロークは、思ったより短い

スムーズに発進したり、ショックの無いシフトチェンジを行うには、半クラッチのストローク範囲を身体に馴染ませるのが秘訣。半クラッチのストロークの中で、切ったり繋げたりを素早くかつ適量に行うことが大事だからだ。

力を入れなくてもレバーがカタカタと軽く動く範囲が遊びだが、シフトチェンジの際にはブレーキと同様に事前に遊びをキャンセルしておくことが大切だ。

さらにレバーを引くと「クラッチが切れる方向」の半クラッチが始まるが、これはレバーが硬くなったところからなのでわかりやすい。しかし、どこまでレバーを引くとクラッチが完全に切れるのかは曖昧だ。このストローク位置は、発進時にクラッチを完全に切った状態からレバーを握る力を緩めて行き、「クラッチが繋がる方向」の半クラッチが始まる場所と同じ位置だが、やはりわかりにくい。

そして、この半クラッチのストローク範囲は思った以上に短いが、ここが的確に操作できるとスムーズな発進やシフトチェンジに非常に役立つので、ぜひ以下の方法を試して身体に馴染ませよう。

1.レバーの遊び
クラッチレバーの遊びとは

力を入れなくてもレバーがカタカタと動く「遊び」の部分。クラッチは完全に繋がっている。

2.半クラッチのストローク範囲
半クラから完全にクラッチが切れるまでの流れ

遊びが終わり、レバーが重くなったところから半クラッチが始まり、クラッチが徐々に切れていく。車種にもよるが半クラッチのストロークは思ったより短く、レバー先端の球が1個分くらいの範囲だ。

3.クラッチが完全に切れる
クラッチを完全に切るときは、4本指でレバーを握っても良い

半クラッチが終わってから完全に握り込むまでのストロークは、クラッチが完全に切れている(停車する際は4本がけでもOK)。半クラッチの範囲との境目が解りにくいので、次の方法でしっかり実感しておこう。

わざとエンストさせて、半クラッチのストロークを把握する

バイクをわざとエンストさせる方法

エンジンをかけ、前後ブレーキをしっかりかけた状態で、クラッチを切ってギヤを1速に入れる。スロットルは全閉のまま。

バイクをエンストさせれば、クラッチ操作が調整できるようになる

エンストするまで、クラッチレバーをゆっくりとリリースしていく。

前述した通り、「クラッチが繋がる方向」の半クラッチが始まる位置(=クラッチが完全に切れる位置)は、なかなかわかりにくい。そこで、敢えてエンストさせることでストローク位置を確認しよう(エンストはバイクに良くないイメージもあるが、極端に何十回も繰り返さなければまったく問題ない)。

上記の方法でクラッチレバーをゆっくり離していくと、エンジンの回転が下がり始める場所があるが、そこが「クラッチが繋がる方向」の半クラッチが始まる位置なので、しっかり覚えておこう。

そのままレバーを緩めていくと、さらにエンジンの回転が下がってプスッとエンストするが、このポイントはクラッチがおおむね繋がった状態(エンストするタイミングは車種や排気量で異なる)。クラッチが完全に繋がるのはレバーを引く力を完全に緩め、レバーの遊びが始まる位置だが、半クラッチのストロークがかなり短いことは実感できるだろう。

次回予告 ♯10 リヤブレーキ、使ってますか?

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